Paul J. Silvia (2007) How to Write a Lot: A Practical Guide to Productive Academic Writing

 

How to Write a Lot: A Practical Guide to Productive Academic Writing (LifeTools: Books for the General Public)

How to Write a Lot: A Practical Guide to Productive Academic Writing (LifeTools: Books for the General Public)

 

 

 論文執筆の生産性向上に関する本です。ちなみに著者のあとがきによると、「いかにしてふだんの仕事の週に不安と罪の意識を感じずにより生産的に執筆するか」(How to Write More Productively During the Normal Work Week With Less Anxiety and Guilt)というタイトルが正確であるけれども、それでは売れないから違うタイトルにしているとのことです。

 本書でも引用されているRobert Boiceの研究を読んだことがあったので、同様のアドバイスがいくつも挙げられていました。たとえば、生産性を上げるためには、締切前に一気に書き上げるやり方(binge writing)ではうまくいかず、毎日執筆する習慣が必要であることなどです。ただ、毎日執筆する習慣が大事とは言っても、それを身につけるのはやはり難しいので、本書はその面での有益な内容が含まれていました。

 具体的には、著者は一日の中で執筆に当てる時間を決めるべきと言っています。よく執筆が停滞している理由として、「執筆のための時間がない」というものがありますが、著者はこういった言い訳も次々に切って捨てます。「授業をする時間がないと言う大学教員はいない。なぜなら授業の時間はカリキュラムに組み込まれているからだ。論文執筆も毎日のスケジュールに組み込めばよい」というのです。著者自身は平日の午前中を執筆に当てており、メールの返信などそれ以外の仕事はしないとのことです(そういえば、私の学部時代の指導教官も、30代の頃は午前中にどんな仕事を頼まれても断っていたと仰っていましたねえ)。

 またもう一つ重要だと思ったのは、毎日の目標を立て、かつその進捗をモニタリングすべきということです。たとえば、「今日は200語書く」、「昨日書いた初稿を読み直し、修正する」などの例を挙げています。モニタリングの方法として、著者はスプレッドシートに達成状況を記録し、かつ今日は何語書いたかまで記録しているというのには驚かされました。

 自分もこの1ヶ月、本書のアドバイスに従って、平日の午前中はなるべく執筆に当て、毎日の目標と達成状況をExcelファイルに記録してみました。毎日決まって執筆時間を作れたわけではなく、習慣になったとは言い難いのですが、だいたい1本論文が書けました。進捗をモニタリングするということは今までやったことがありませんでしたが、適切な目標設定ができていたかを反省的に学べるのはよいことだと思いました。また、「今日やるべきことは終わったから、もう帰ってもよいか」と仕事の区切りがつけやすくなり、健康上・精神衛生上もよい面があるかもしれません(「タイム・バインド」の問題の緩和?)。