木下是雄(1981)『理科系の作文技術』

 

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

 

 

 おそらく学部の1,2年次に一度読んでいるはずなのですが、思い出すことができません。いずれにせよ、この手の本は自分である程度に論文を書く経験を積んでから理解できる内容が多いと思いました。主に理科系の論文が念頭に置かれており、例もほとんどが物理系のものですが、実証的な社会科学の分野に共通する内容も多いでしょう。ただし、論文が手書きであった時代を背景としているので、隔世の感がある部分もあります。

 文章におけるパラグラフの役割を解説した4章が、もっとも勉強になりました。英語にくらべると日本語ではパラグラフの構成は厳密でないことが多いものの、著者は日本語においても英語に近い書き方をすべきと主張します。すなわち、1つのパラグラフは原則としてトピック・センテンスではじまり、続く文はトピック・センテンスの展開、あるいは次のパラグラフへの連結であるべきというものです。

 もう一つ非常にためになったのが、文の構造と文章の流れについて解説している5章です。著者によれば、日本語では修飾句・修飾節が前置されることが多いため、主語・述語の前に長い修飾部が入り組んだ、「逆茂木型」の文を書くことが多いと指摘します。これが文を読みづらくしているとして、次のような心得を挙げています。

  • 一つの文の中には、二つ以上の長い前置修飾節は書き込まない。
  • 修飾節の中のことばには修飾節をつけない。
  • 文または節は、なるたけ前とのつながりを浮き立たせるようなことばでかきはじめる。