古川武士(2013)『「やめる」習慣』

 

「やめる」習慣

「やめる」習慣

 

 

 自分の時間の使い方を振り返ると、やらなくてもよいことに非常に多くの時間を割いてきているわけですね。「あのことに費やした時間をすべて仕事に割り振っていたら、何本論文が書けていただろうか…」と考えることも頻繁にあります。

 まあ、頭ではわかっていてもなかなか実行に移すのは難しいわけですね。自制心のなさ(よくないと知りつつ行為する)については、アリストテレスが2000年以上前に「アクラシア」という言葉で述べているほど根深い問題ですね。本書では、何かを決意した時とそれを破る時ではあたかもまったく違う人格になっているかのようなことを、「別人問題」という名前で紹介しており、なかなか卓抜な表現であるように思います。

 最近は、いかにしてやらなくてもよいことを避けるか、特に気を散らすきっかけ(distraction)をいかに避けるかが、あらためて自分の中でホットな課題になっており、関連する内容を勉強しています。自分にとっては明らかなdistractionになりそうなので、もともとFacebookTwitterのアカウントは持たないようにしてますが、それでもインターネットの時間の使い方に関しては反省すべき点があまりに多いですね。

 本書は実践的な志向の強い本で、習慣化のためのスケジュールの立て方であったり、モニタリングの仕方であったりなどが指南されており、自分が何となく考えてきたことと整合する点も多かったです。ただ、結局のところは行動に移せるかという覚悟の問題だなと思いました。やらなくてもよいことを決めるというのは、ピーター・ドラッカーがマネジメントの世界で言ったところの「劣後順位」(posteriority)という考え方も関係してきそうですが、ドラッカーも劣後順位をつけるのは、分析よりも勇気の問題であると述べているようですね。

 本書の読了後には、もっと学術的な内容が含まれている、Deep Workという本を読み始めています。