Hirsh(1976)位置への人々の競争

 

Hirsh, Fred. 1976. Social Limits to Growth. Cambridge. Harvard University Press

 

 個人的機会と社会的機会の分断はいくつかの理由で起こりうる。たとえば、過剰な汚染や混雑はもっともよく知られた結果だろう。この分断を生み出す一般的な条件のうち、見過ごされてきたものの一つは成果への競争ではなく、むしろ位置への人々の競争である。社会において昇進するためには、自分の同僚の中でより高い位置に移動することでのみ、つまり他者の成果と比較して自らの成果を改善することでのみ可能なのである。もし全員がつま先立ちをしたならば、誰もよく見ることができない。こうした種類の社会的相互作用が存在する場合に、個人の行為は個人の選択を実現するための確実な手段にはもはやならない。つまり、好ましい結果は集合的行為を通じてのみ得られるものであるかもしれない(私たちはみな、明確にあるいは暗黙につま先立ちをしないことに同意する)。その結果、個人の選択と、集合的条項あるいは集合的規制という馴染みのある二分法は瓦解する。自由市場における孤立した個人間の競争は、他の人々への、ひいては自分自身への隠れたコストを伴う。これらのコストは全員に対する超過コストであり、他に好ましい配分の方法がない限りは社会的浪費を伴うものである。しかし、後続する社会的相互作用が考慮されていない個人の需要に対して公的供給が反応するときにも、同様の歪みが生じるかもしれない。[5]