Austin(2011)「観察研究において交絡効果を減少させるための傾向スコア分析法入門」

 

Austin, Peter C. 2011. "An Introduction to Propensity Score Methods for Reducing the Effects of Confounding in Observational Studies." Multivariate Behavioral Research 46(3): 399-424.

 

  • 読み直して、気になったところを中心に書き出しました。 自分の読んできた中で傾向スコア分析の入門としては、一番よい論文のように思います。

 

  • 傾向スコアはバランシングスコアの一種であり、それを条件づけることで観察される共変量の分布は、処置群と非処置群の間で類似したものとなる
  • 傾向スコアを用いることで、観察研究のデザインと分析を分離することが可能になる;ランダム化比較実験と同様に、研究デザインがきまってからのみ、処置変数の結果変数への効果が推定されるのである;回帰分析による共変量調整では、結果変数が常に念頭にあるため、分析者は望ましい関連がみられるまでモデルを修正したいという誘惑にかられることになる
  • いくつかの研究によると、推定した傾向スコアを層化する方法、回帰分析の共変量として用いて調整する方法にくらべて、マッチングによってバイアスが取り除かれる比率が大きい;状況設定によって、マッチングとIPTWは同程度にバイアスを取り除く場合もあれば、マッチングが若干上回る場合もある
  • どのような変数を傾向スコアの推定に含めるかに関しては、処置変数のみと関連し結果変数とは関連しない共変量は含めるべきではなく、処置変数とは関連せず結果変数とは関連する共編量は含めるべきであることがしられている;しかし多くの状況では、変数間の真の交絡関係はわからないことが多く、実際には処置変数・結果変数の双方と関連を持つ共変量が多いため、観察されるベースラインの共変量をすべて傾向スコアの推定モデルに含めることにはあまり問題はない
  • ランダム化統制実験と同様に、傾向スコアは限界処置効果(あるいは母集団平均効果)を推定するものであり、条件付き処置効果の推定を行う回帰ベースのアプローチとは対比される
  • 傾向スコアの推定に関するバランス診断は、結果変数の回帰モデルが正しく特定されているかどうかの診断よりも、透明性を有する
  • 同様にして、回帰ベースのアプローチを用いた場合にくらべて、観察される交絡が十分に取り除かれたかどうかを評価するのが傾向スコアによる分析ではより簡単である