Matthews(2000)「コウノトリが赤ん坊を連れてくる(p=0.008)」

 

Matthews, Robert. 2000. "Storks Deliver Babies (p = 0.008)." Teaching Statistics 22(2): 36-8.

 

  • 授業のネタ用に読みました。GoertzとMahoneyの本でも指摘されていましたが、明らかに何かがおかしいのにすぐには交絡要因が思いつかないというのが、この例のポイントなわけですね。

 

  • 統計学の入門書は、相関と因果の混同について決まって注意を促すが、その時に引用される例(子どもの靴のサイズと読解力など)は、現実のデータに基づいていないことが多く、また交絡要因が明らかなことも多い
  • コウノトリが赤ん坊を連れてくるという伝承に関して、実際に検証した
  • 1980年~90年のヨーロッパ17ヶ国のデータを使用する
  • 出生率を(1,000人/年)を、コウノトリの数(つがい数)に回帰させると、相関係数は0.62であり、p値は0.008であった
  • 帰無仮説が正しいとすれば、これだけ極端な結果が得られるのは、125回に1回という割合である
  • もちろん、観察された相関の妥当な説明は交絡要因によるものであり、たとえば土地の広さがその1つになるだろう
  • コウノトリと出生数の関係は統計学の入門書に出てくる多くの例とは異なり、すぐには説明できないものの、因果的に無意味な例である
  • このばかばかしさは、相関/因果の誤謬に関する教育的価値のみならず、p値の厳密な意味や、帰無仮説の棄却が実質的な仮説の正確さとはならないことに、注意を促してくれる