山田昌弘『少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ』

少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ (岩波新書)

少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ (岩波新書)

パラサイト・シングル(学卒後も親と同居し、独身生活を続ける人々のこと)」という言葉の生みの親となった人の本。

本書によれば、少子化の原因は以下のようなものとのこと。

○終身雇用や年功序列という将来賃金が増加してゆく希望が減少してきたこと。
パラサイト・シングルの増加により、結婚後の生活水準要求が高止まりしていること。

すなわち収入が上がる見通しがつかない一方で、結婚してからの生活水準が下がることには我慢できないため、結婚率が下がった。ゆえに、少子化が進んだということだ。

このような問題への対応として、筆者は次のような見方を提示している。

○賃金が年齢に応じて、上昇してゆくという仕組みが壊れたのは、グローバルな変化を受けたものなので、どうしようもない。
○結婚後の生活水準要求を下げるのは、意識の問題であり、難しい。

ゆえに、
○賃金は低いままでもそれなりの結婚生活を送ることができるように転換する必要がある。
○一人の収入は低くても、夫婦二人の収入を合わせれば、それなりの生活を送ることができるようになる。
○夫婦の共働きがよりしやすくなるような制度支援を進めるべき。

というようにまとめられる。