夏目漱石『草枕』

草枕 (岩波文庫)

草枕 (岩波文庫)

冒頭の「智に働けば〜」で有名な作品。
非人情の世界に生きることに憧れる画工が、人里離れた山に旅をしにゆくというような話だ。


漱石がいかに自然と文明の間の相克に悩まされたかということが、現れている作品なのかと思う。

越すことのならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容て、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降る。(p.7)

とあるが、中盤以降では俗世を離れた山に来ても、「人情」にとらわれた目でしか観察をできないというプロットで描かれているから。