杉山大志編『これが正しい温暖化対策』

これが正しい温暖化対策

これが正しい温暖化対策

シンクタンクの研究員が、温暖化の政策分析について書いた本。
内容は主に京都議定書に基づく排出権取引やCDMの批判と、人口を単位とした排出量目標を設定したり、技術投資によるCO2対策をしたりすべきといった提言である。

「机上の空論」ではなく、実態を直視した経験科学的な方法を重視したと編者は言っている。豊富な事例を引きつつ書かれた分析は、高度な専門的知識をよくかみ砕いて紹介していると思う。紙面の都合上からか、基のデータに十分に触れられていない部分が多々あるけれど。

排出権取引は各国のパイの奪いあいになること、省エネ技術への投資の方が途上国も合意しやすいことなどは、言われてみれば当然だ。しかし現実がそのように進んでいないのは、日本の政策担当者がテクノロジーに無理解であることや、日本の外交能力の低さに起因するのかとも思う。