『雨あがる』

雨あがる [DVD]

雨あがる [DVD]

黒澤明の遺された脚本をもとにつくられた映画。

一流の腕を持つにもかかわらず、人がよすぎることが災いしてなかなか仕官がかなわない浪人と、その妻を中心に描かれている。

とある浪人とその妻は旅の途中、長雨に遭い宿場町に足止めを余儀なくされる。
心優しい浪人は、雨で仕事ができない人々が不憫になり、剣術の賭け試合をしてつくったお金で食糧を与える。

雨があがった後、浪人はその城下の武士の果し合いを目撃し、身を挺してとめる。その腕を城主に見込まれた浪人は、ここでなら今度こそ仕官できると期待する。しかし、どのような理由であれ賭け試合をしていたことが問題とされ、結局また旅を続けることを余儀なくされてしまう。


不器用な生き方しかできない浪人を理解し、受け入れる妻の姿が健気だと思った。物語の前半で、どのような理由であれ、賭け試合をとがめていたものの、最後では「これからは、望んだときにぜひ行ってください」と浪人の生き方を積極的に肯定するようになっている。


ここで描かれているのは道徳的に生きることと、世の中をうまく生きることとの乖離だ。そして、道徳的な生き方にはそれでもなお価値があるということを称揚するメッセージが込められているのだと理解した。