『鈴木先生(1)〜(4)』
- 作者: 武富健治
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2006/08/11
- メディア: コミック
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学科の先輩がゼミで紹介していたので購入。
久しぶりにすごい漫画を読んでしまった。
ある公立中学校の教師を主人公にしたいわゆる学園ものなのだが、旧来の作品ではおそらく描かれたことがないようなタブーに斬り込んでいる。
例えば教師が授業中に生徒に欲情するとか、教師・生徒間のいざこざで精神を病んだ先生が周囲を罵倒しまくるなど、どれもグロテスクで、しかしどこかリアリティを持った話が出てくる。
それだけでは、ただ単に過激な作品にしかならなかっただろう。この作品のオリジナリティは、教育という道徳的・規範的な価値が持ち込まれる場において、その根拠が既に失われていること、すなわち「底が抜けてしまっていること」が巧みに指摘されていることに他ならない。
教師や大人社会の矛盾を卓抜に見抜く中学生たちの言動を、「鈴木先生」は安易な回答やぼかしによって対処するのではなく、セカンド・オーダー、サード・オーダーのメタ的な考察を重ねることで生徒に向き合ってゆく。
その結果として、必ずしも「救い」はもたらされていないが、読むものをどこかほっとさせる。
逆説的だが、教師という職業に少し魅力を感じてしまった。