『A2』
- 出版社/メーカー: マクザム
- 発売日: 2003/07/25
- メディア: DVD
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森達也監督のドキュメンタリー映画。前作『A』から数年、オウム真理教団(当時はアレフに改称)の信者が、各地に居住したことに対し、住民による立ち退きを求める運動を追った内容になっている。
前作同様、いかに日本のマスコミが事件の一側面しか報道していないか、ということが重要なメッセージであったと思う。
「殺人集団オウムは絶対に許さない」、「オウムは絶対に出てゆけ」という類の住民のメッセージしか、当時のマスコミ報道ではなされていなかったように思う。しかし、本作では描かれているのはそうした排斥運動だけではない。もっとも印象的なのは、群馬県のある町において、住民が信者たちに親近感をいだいてゆく様子だ。
初めは、信者たちと口を聞こうともせず、運ばれてくる物資に対しても持ち物検査をする住民たち。しかしながら、時間が経つにつれて敵対意識は薄れ、むしろ「今まで孤立していた住民たちの交流の場となっている」とまで言われる。やがて、信者を監視するためであったテントは、住民と信者によって共同で解体される。
このシーンに対して、作品中でも「マスコミはこの様子を絶対報道しないでしょうね」というようなことが言われる。しかし、マスコミの報道の仕方に対するこうした反発は、教団を擁護するために行われているのではない。むしろ、「オウム=善or悪」というような単純な思考こそが戒められている。
最後のシーンで監督自身が、「今の社会がこれだけ憎悪むき出しになって、それのきっかけになったのはオウムだし、あの事件だし、このまま沈静化されちゃたまらないなという気持ちが僕の中にはある。オウムのサマナ[出家信者]のあの事件は何だったんだろうか、意味以上に社会にとって、本当は僕らにとってなんだったんだろうかって考えなきゃいけないんだと思う。そのベクトル誰も持ちえていないし、このままどんどん減衰していくし、それをすごく焦りますね。」ということを教団幹部に投げかけている。そうした煩悶を観る側も求められているのではないだろうか。