姜尚中『悩む力』

悩む力 (集英社新書 444C)

発売したころは、姜先生もつまらなさそうなタイトルの本を出すものだと思っていたが、メディアでの評判はなかなか良い様子で、気にはなっていた。

この前、ゼミでたまたま姜先生の話題が出ていたことと、池袋のジュンク堂でたまたま目についたので、他の本と一緒に購入。

内容としては、夏目漱石もマックス・ヴェーバーも100年前、現代の日本人と同じ悩みを持っていたよ。悩むのは全然構わないよ、むしろ悩み続けた限界に突破口が見えてくるよ、という感じ。

漱石もヴェーバーも、近代化による個人の孤立に関心があったことは知っていたが、本書は新書にしてはかなり掘り下げられていて面白かった。自殺率の増加や、若者の労働についての記述はあやしい部分もあったけれど。

また、著者が自分自身を振り返る上で、近代人一般の悩みよりも、在日という出自に重きをおいてしまっているのが、漱石やヴェーバーと対比する効果を下げてしまっているのではないかと思った。