高等学校学習指導要領改定案

2013年度から完全実施される、高等学校学習指導要領の改訂案が先月22日に出された。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm


注目すべき点について2つほど。

一つは、理数系の科目で前回削減された内容が復活し、標準的な英単語数が4割増となっていること。文科省は否定しているが、「ゆとり路線」への批判から、見直しに踏み切ったと言われるのは仕方のない気がする。まあ、アカデミズムの世界ではもはや通用しない「詰め込み」か「ゆとり」かの二分法的な思考について、きちんとした方針が示せてないことが問題だと思う。

もう一つは、英語に関して「授業は英語で指導することを基本」とする方針が出されたこと。まず、高校の英語科の先生は、英語で指導する訓練を受けていない。一応、何億円かの予算はつくようだが、ちゃんとした研修でも組まなければ、かなり骨抜きの実施内容になってしまいそう。
また、「英語で教えれば、実践的な英語力が身につくようになる」という発想の仕方がそもそも問題だ。こうした方針が出されたことの背景には、「学校英語が役に立たない」という長らくの批判があることは明らかだが、だからといって英語で授業をやればよいというものでもない。あいさつを交わすレベルならともかく、ビジネスや国際交流で要求される英語能力は、かなり論理的な思考を要求する。だからこそ、効率よく習得するために英文法というものを教えているはずなのに。
というかそういう類のことは、英語の文書を書く機会の少なくない、文科省のお役人さんの方が分かっていることだと思うのだが。


かなり適当なことしか言えないのだが、「ゆとり路線」の見直しも、英語の指導方法についても、保護者からの受けの問題が少なからずあるのかな、と思う。
公教育への不信が高まっていることは日本だけでなく先進各国で言えることではあるけれども、政治だけではなく行政までポピュリズムの方向に行ってしまってよいのかと、少し不安にはなる。