木田元『なにもかも小林秀雄に教わった』
- 作者: 木田元
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/10
- メディア: 新書
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ジュンク堂池袋店にて「木田元書店」が開店中。哲学者の木田元がお薦めする本を並べたフェアで、本書はそこで買った1冊。
木田元が朝日新聞で連載していた自伝的コラムに加筆修正をした内容となっていて、自身の人生観の形成、あるいはハイデガー、ランボー、ドストエフスキーなどの読み方について、小林秀雄が強い影響を与えてきたということが述べられている。ただ、実際は小林秀雄について触れられている箇所は、半分よりも少ない。
ところで、この著者は経歴がなかなか特殊で、自伝部分の読み応えがあった。
1928年生まれで大学の教員となると、旧制高校を経て大学に入るというのが標準的なパターン。しかし、この著者は戦争後の貧困状態から何とか農専に入り、その後父親が満洲から帰ってきて比較的余裕ができ、大学に入るというルートを辿っている。農専時代に全く勉強する意欲が湧かず人生に悩んでいたこと、ハイデガーの『存在と時間』を読むためだけに大学へ行こうと思ったこと、旧制高校でドイツ語・フランス語を学んできた学生に追いつくために行った勉強法の話などが面白かった。
しかし、この時代の人たちは読書量が半端なかったのだねえ。正に「教養主義」が没落していなかった頃なのだと感じた。