苅谷剛彦『学力と階層――教育の綻びをどう修正するか』

学力と階層 教育の綻びをどう修正するか

学力と階層 教育の綻びをどう修正するか

著者の2003年頃からの論文を集めて書籍にしたもの。

読んだことある論文もいくつかあったのだが、書籍になることで、著者が学力問題から教育行財政や学習行動の問題に重きを変えてきた過程が可視的になっている。

とりわけ目新しい内容はなかったのではあるが、一番面白く読めたのは「『大衆教育社会のゆくえ』以降 10年後のリプライ」という論文。

『大衆教育社会のゆくえ』に対して寄せられた、元日本大学教授の黒崎勲からの批判に対し、10年を経てリプライするというもの。

「教育社会学が提示する事実は、応用倫理学がよって立つような事実とは異なるものである」という批判に対して、社会的再帰性の観点から、どのように教育社会学の実証研究をとらえるべきかが書かれていた。リプライになっているのかどうかよく分からないところもあったのだが、実証研究の成果を再帰性のサイクルとの関わりから、慎重に提示してゆかなければいけないということについてはもっともだと思った。