『精神』

http://www.laboratoryx.us/mentaljp/index.php

シアター・イメージフォーラムにて。

想田和弘監督の作品のドキュメンタリー映画。非常に高い評価を得ているようで気になっていた。

岡山県にある外来の精神科診療所を題材としたもの。通常のドキュメンタリー番組で精神科の施設を取材するときには、被写体にモザイクがかかるものだが、この映画ではモザイクをかけていない。

患者の一人が作中で「健常者と精神病患者の間にはカーテンが引かれている」という旨の発言をしているが、本作はそれを取り払う試みであると、監督自身は答えている。

また、マイケル・ムーアのドキュメンタリー映画に見られるような、プロパガンダ的な手法は全く用いられず、淡々と患者と医師、診療所スタッフを追っているのが印象的だった(暗に障害者自立支援法を非難していると読み取ることもできるとは思うが)。代表である医師のモットーである「病気ではなく人を看る」という姿勢が作品にも表れているのではないかと思う。

精神障害に対して一般的に持たれている偏見とは異なった、患者たちの多様な人間性が表れていて、よい意味でたいへんショックを受けた。例えば、過失で子どもを失った女性が出てきて同情を誘われる一方、待合室で患者たちが談笑しているシーンには心が温まる感じがした。また、ラストで患者の一人が電話口で意味不明なことをずっと言った後にバイクで家に帰ってゆくシーンは、単純には理解できないのだなと混乱を覚えさせられた。また、スタッフロールにおいて、登場する患者のうち幾人かはすでに亡くなって(そのうち幾人かは自ら命を絶って)しまっていることには何とも言えない気分になった。


想田和弘監督の前作『選挙』が復刻上映中らしいので、今度観に行きたいと思う。