S.ボウルズ, H.ギンタス『アメリカ資本主義と学校教育1―教育改革と経済制度の矛盾』

アメリカ資本主義と学校教育 1―教育改革と経済制度の矛盾 (岩波モダンクラシックス)

アメリカ資本主義と学校教育 1―教育改革と経済制度の矛盾 (岩波モダンクラシックス)

風邪気味…。頭が痛い。

ヘッド・スタートなど、米国で試みられてきたリベラルな教育改革がなぜ失敗してきたのか、というのが著者たちの関心。曰く、学校教育は社会的な平等を達成させるための手段ではなく、経済制度の矛盾を反映したものである。すなわち、アメリカの労働市場ヒエラルキー的な分断をなしており、学校教育は資本家ないしは経済エリートが自らの支配を正当化するための装置になっている。

将来、分断された労働市場で劣位に置かれることになるであろう生徒たちには従順な意識を持たせるような教育が行われ、優位に置かれることになるであろう生徒たちには、自発性や創意を尊重する意識を持つような教育が行われている。これが著者たちの言う「対応原理」。
こうした不平等の構造はリベラルな教育改革では解消されるということはなく、経済制度を変えなければならないと主張される。

社会主義への変革には賛同できないけれど、リベラル派への批判は日本社会でもかなり重要なのではないかと思った。能力主義への懐疑も。

自分がやろうかと思っている研究は、人的資本論―技術機能主義的な枠組みにどちらかというと拠っているのだが、理論としては再生産理論や葛藤理論の方が圧倒的に面白い。