原純輔・盛山和夫『社会階層―豊かさの中の不平等』
- 作者: 原純輔,盛山和夫
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 1999/09
- メディア: ハードカバー
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SSM95の成果の一つ。社会の豊かさの進展とともに、基礎財の分布の平等化は進んだが、上級財の分布は不平等のままであるというスタンスのもと、階層論の現代的な意義が提唱されている。
盛山先生はもう実証研究はやらないのだろうか。
理論やモデルの方に行ってしまわれたことと、東大で階層論を含む分野で計量研究が停滞していることと関係があるという話を聞いたが、この頃の研究を読むと確かにそういうこともあるのかなと思う。
本書は、東大出版会から出ているが、階層論研究者以外の読者も想定しているのか、わりと噛み砕いた説明が随所でなされていると思った(特に粗移動や構造移動、オッズ比の説明も丁寧にしているあたり)。階級・階層理論の系譜や基本文献がまとまっていたのはためになったが、そのぶん図表がかなり省略されていたのは残念。
1点瑣末なことを。第5章「ジェンダーと階層」のp.189で、
[女性の階層的状況の]指標としては、しばしば階級帰属意識や階層帰属意識が用いられる。しかし、欧米の研究でも、日本の研究でも、基本的に夫もしくは世帯の状況が圧倒的に説明力を持っていて、妻本人の状況の影響は弱いことが示されている。
という記述があり、いくつかの経験的な研究が示されている。でもそこで引用されている文献の1つ*1で、フルタイム女性の階層帰属意識は独立モデル(夫の地位変数を用いず、女性自身の地位変数を判断基準とすること)が有効であり、パート女性の階層帰属意識を規定する要因は見つからなかった、ということであり、正しく引用されていないのではと思った。