大沢真理『男女共同参画社会をつくる』

男女共同参画社会をつくる (NHKブックス)

男女共同参画社会をつくる (NHKブックス)

社会保障制度は負担割合の頻繁な変更、働き方・扶養状況での加入形態の違い、財源と配分の形態の違い(例えば年金における完全積立方式、修正積立方式、賦課方式)などがあって非常にややこしいのだが、本書は80年代以降の日本における制度の変遷が整理されていて勉強になった。必要が生じたら本書に立ち戻れば、かなりの知識が足りそう。

もちろん、単なる日本の制度の解説が本書の目的ではなく、「社会政策の比較ジェンダー分析」の手法により、「男性稼ぎ主」モデルから「両立支援」モデルへの転換を考察することに主眼が置かれている。日本の社会保障、雇用、家族を読み解く上でいかにジェンダーという視点の切れ味がよいかということを改めて感じた。最後の章の提言内容も、夫婦の年金記録の二分二乗(夫婦の年金拠出を合算して二分した額をそれぞれの納付の記録とする)などという一見すると突飛なものも出てくるが、その代わり遺族年金が不要となるという論拠によっており、合理的・包括的な設計がなされている。

本書で分からなかったのは、「三つの福祉体系」として「生活の場での自発的協力に基礎づけられた地方政府」、「生産の場である職場での自発的協力に基礎付けられた社会保障基金政府」、「全国的にミニマム保障の責任を負う中央政府」の3つを確立する必要が提言されているが、それをどこから手をつけるのか、あるいは同時に実現することができそうなのかということだ。社会保障がシステムをなしている以上、部分的に手をつければ一時的にせよどこかに歪みができるはずで、そのあたりをどう考えればよいのか。