ジョン・ステュアート・ミル『自由論』

自由論 (岩波文庫)

自由論 (岩波文庫)

 二つの格率とは、第一に、個人は、彼の行為が彼自身以外の何びとの利害とも無関係である限りは、社会に対して責任を負っていない、ということである。他人による忠告、教示、説得、および他の人々が彼ら自身の利益のためにその必要があると考える場合に彼を回避することは、社会がその個人の行為に対する嫌悪や非難を正当に表現するための、それしかない手段である。第二には、他人の利益を害する行為については、個人は責任があり、また、社会が、その防衛のためには社会的刑罰または法律的刑罰を必要とするという意見である場合には、個人はそのいずれかに服さねばならないであろう、ということである。
(pp.189-190)

ようやくまともな体調に戻った。

全体として素晴らしい本だが、特に第二章「思想および良心の自由について」は19世紀半ばに書かれたとは思えない、現代の問題(宗教的対立、同性愛など)を考える上でも示唆の多い内容だった。

個人あるいは他人の利益を害しているかどうか、という境界の設定は非常に難しい問題であるが、本書の後半では色々と具体例を挙げながら、緻密な議論が展開されていた。
ただ、福祉公共事業への国家の介入については判然としないところあり。

また、教育についてミルが非常に大きな情熱を持っており、個性の発揮・伸長に積極的な価値を与えているとは知らなかった。理想主義的すぎる傾向は見られるものの、自由主義と教育の関係を考える上でも、参照すべき点が多い。