『ソラニン』

http://solanin-movie.jp/

アジカンの曲が非常によかった。主要登場人物たちは大学卒業2年目ということで,ピンポイントで自分と同じ年代になる。

ライブが終わって,宮崎あおい演じるヒロインが,「とりあえずこの関係が続いているうちは幸せ」という感じの独白で終わらせて,それに引きずられそうになるわけだが。バンド仲間がよい奴ばかりなので,実際幸せなのかもしれないが。

しかし忘れられないのが,高良健吾演じる主人公の男が,交通事故死するシーン。
フリーターをしつつ,バンドを中途半端に続けつつ,今のままの生活でよいのか自問し続け,ようやく少し答えが見つかったかと思ったときに,再び本当に自分は現在幸せなのかという疑問が頭をよぎる。そして納得が得られないまま,バイクで赤信号を突っ切り,死亡してしまう。

仮にあそこで死んでおらず,ヒロインとの生活を続けていたとして,彼は幸せになれたのだろうかという疑問が浮かぶのだけれど,おそらく幸せにはなれなかっだろうという思いしか抱かせない。

人間関係の充足だけで幸せになれるかどうかというのがテーマな気がして,主人公の男はそれだけでは幸せになれないタイプ。2回出てくるおじいちゃんがおそらく主人公と対比されていて,今の若者の特徴を描きだそうとしているのだろうと思った。

一見まったりと生活していながら決して幸せになれなさそうな,「先の見えなさ」しか感じさせない悲しい(しかしよい)作品だった。原作の浅野いにおはそういう部分で評価されているのだろうと思う。