蟹沢孝夫『ブラック企業、世にはばかる』

ブラック企業、世にはばかる (光文社新書)

ブラック企業、世にはばかる (光文社新書)

キャリアカウンセラーという職業を活かした、内部資料を提示している箇所は面白かった。借り物だと線を引いて読めないのが辛い。

著者は日本で転職市場が成熟しないことを主に解雇規制の強さに見ているが、この因果関係は突き詰めて行くとよく分からないと思う。解雇規制が弱くても、中途採用のコストが高ければ新卒中心の採用は維持されるだろうし、そもそも日本では解雇規制が強いのかどうかという疑問もある(OECD諸国での比較で)。

また、IT業界での大手元請け、中小下請けの構造がブラック企業を生み出すことを指摘しているが、製造業の下請けとは違う関係なのだろうかということが気になった。

それから、ブラック企業を、「肉食系ブラック」、「草食系ブラック」、「グレーカラー」と分類しているがネーミングが微妙。くわえて、「草食系ブラック」とは、業務内容は楽であるものの、キャリアの蓄積が困難な職場として定義しているが、主婦パートや、事務系一般職なんかは前々からこうした問題があるわけで、あたかも新しい現象であるかのように書くのは適切ではないように思う。