高山博『ハード・アカデミズムの時代』

ハード・アカデミズムの時代

ハード・アカデミズムの時代

著者は、新しい知を創造する行為である「ハード・アカデミズム」と、既存の知を分かりやすく伝える「ソフト・アカデミズム」がこれまで峻別されてこなかったと説く。そして、学問の国際的な競争が進む中で、前者の役割が大きくなり、輸入学問の伝統が強い日本の大学は淘汰されてゆく危険性を主張する。


さくっと読める割に、内容は深かった。大学、学問を巡る状況の変化も興味深かったが、一番面白かったのは著者のイェール大学での留学時代の話。
アメリカの大学院について書いた文章を読んでいるとよく出てくる話ではあるけれど、膨大な量の文献を読ませ、それに基づいて教官が鋭く質問し、学期末には質の高いリサーチ・ペーパーを書かせるという指導のスタイル。ああ、こんなにすごい訓練積ませているのに比べて、日本の大学院が敵うはずないじゃないと感じてしまう。

しかし、著者が描いてみせている、2020年には日本の進学校の高校生のほとんどはアメリカの大学に行き、東大の合格者ランキングは廃止されているという一つのシナリオは、幸か不幸かまだ起こりそうにはない。それはきっと日本に一定規模の人口と、独特の労働市場の慣行が存在しているから。