清家篤『生涯現役社会の条件―働く自由と引退の自由と』

若年労働力が少なくなる中で、生涯を通じて働く自由(と引退の自由)をいかに保障してゆくかという関心。
定年制の延長や廃止し、また定年制を必要とさせる年功賃金についても見直し、どの年齢段階でも賃金が限界生産性に合うような賃金体系にするべきと著者は主張している。ただし、定年制の延長や廃止が、若年の雇用を抑え込む可能性については、本書は言及していなかった。

厚生年金制度が、人的資本の蓄積の多い労働者に対して、継続就業のインセンティヴを下げる効果をもたらしていることがポイントの一つ。他には自営セクターの拡大や、給付水準を抑えたとしても非正規雇用者も含めて全員を厚生年金に加入させるべきとのこと。

また、本書の主な論点からはそれるが、厚生年金の報酬比例部分を完全に民間にゆだねるという考えに対して、著者が反対していたのが興味深かった。その理由は、個人が民間で運用すると少額であるため個人にとって不利になってしまう可能性があるが、厚生年金でやれば、規模の経済が働くからというようなもの。