加藤文元『ガロア―天才数学者の生涯』

ガロア―天才数学者の生涯 (中公新書)

ガロア―天才数学者の生涯 (中公新書)

天才という呼称すら陳腐なものとする人物が歴史上には存在する。十九世紀、十代にして数学の歴史を書き替えたガロアは、まぎれもなくその一人だ。享年二十。現代数学への道を切り拓く新たな構想を抱えたまま、決闘による謎の死で生涯を閉じる。不滅の業績、過激な政治活動、不遇への焦りと苛立ち、実らなかった恋―革命後の騒乱続くパリを駆け抜けた、年若き数学者が見ていた世界とは。幻の著作の序文を全文掲載。

生協でJIL雑誌の最新版を注文したついでに、つい購入。


高校時代、数学は主要教科ではもっとも苦手だった。何しろ入試では60点満点の物理よりも120点満点の数学の方が点数が低かったくらい。
しかし、数学の一般向け書籍を読むのは結構好きで、『フェルマーの最終定理』『オイラーの贈物』あたりは読んだ。


それで何というタイトルだったか、数学者の伝記本でガロアを知って、その生涯に衝撃を受けた。どうして決闘なんてしてしまったのか、とやるせない気持ちになった記憶がある。
その業績については、五次以上の方程式を解ける条件について探求したという程度の理解しかできていなかったのだが、本書を読んで現代数学の基礎の一つをつくるくらいのパラダイム転換を起こしたのだと知れた。
また、本書は当時の数学界の状況や、七月革命前後のフランスの社会状況、リセやエコール・ポリテクニクといった当時のフランスの教育機関などが非常にわかりやすく解説されていて、面白かった。ガロアが生きたのとほぼ同じ時代を扱った『レ・ミゼラブル』の内容を引いて、その登場人物と対比させているなどしているのも見事。


この人が若くして亡くなっていなかったらどうなっていたのだろうか、と惜しまれることはしばしばあるけれど、ガロアに関してはまさにそれが当てはまる人物だとあらためて思った。
後は、政治活動をしていなかったらというものも。これは山本義隆なんかを見ても思うことだけれど。