『100,000年後の安全』

http://www.uplink.co.jp/100000/


フィンランドで設計中の、放射性廃棄物の地下所蔵施設「オンカロ」を題材にしたドキュメンタリー。


ロシアのパイプラインに依存しているフィンランドにとっては、エネルギーの安全保障上、原発は重要な政策になるらしい。

4基の原発のために、地下500メートルの処分場を設計し、100,000年間それを保持しようとしているフィンランド。一方、55基の原発を保有しながら廃棄物の処分方法が未だに決まっておらず、六ヶ所村東海村に貯め続けている日本。福島第一原発の事故で、原子炉の安定ばかりに関心が向かっているが、廃棄物をどう処理するかというのも極めて重要な問題だということ。

映画の中で印象に残ったのは一つ目に、「原発に賛成か反対かにかかわらず、今ある廃棄物についてどうするかを考えるのが国民の責任」というセリフ。政府や東電原子力保安院の責任はこれからより詳しく検証していかなければいけないのだろうが、世論もそれを黙認してきたことを忘れてはいけないということだ。決して国民に一切の情報が流されず、秘密裏に原発の設計が行われてきたわけではないのだから。

二つ目に、『放射席廃棄物は決して再処理してはいけない。再処理は核兵器の開発に結び付く』というもの。これも、再処理を進めようとしている日本にとっては含蓄深い(実際、一部の電力会社では電力が余っているにもかかわらず、新たに原発を設計しようとしているのは、地域独占を守りたいからや、CO2削減のためだけではなく、日本が核を保有したいからだというような話もあるようだが)。

そして徹底した情報公開が必要であるということ。チェルノブイリ後に原発反対の機運が盛り上がったにもかかわらず、原発政策が進められてきたのは情報公開によって世論の信頼を得てきたからということがあるようだ。


アップリンクの社長が言っていたけれども、原発賛成の人々にとっても、「日本も予算を拡大して、このような地下所蔵施設を造らなければいけない」というような論拠になる映画であり、幅広い視点を提供し得るつくりになっている。
また、フィンランドの雄大な自然も効果的に使われていて、映像も素晴らしい。


しかし、100,000年という数字を出されると世代間の公正とかそういうレベルではないということを今さらながら感じさせられる。ありきたりな表現だが、とても未来に責任が負えないものを進めて来てしまったのだなと。