ヘンリー・ブレイディ,デヴィッド・コリアー編『社会科学の方法論争――多様な分析道具と共通の基準』

社会科学の方法論争―多様な分析道具と共通の基準

社会科学の方法論争―多様な分析道具と共通の基準

『社会科学のリサーチ・デザイン』に対する様々な批判論文(+キングらによる応答)を集めたもの。他の章で似たような議論はされているものの、13章におけるデータセット観察と因果プロセス観察という区別の導入が本書の最もオリジナルなところ。これにより、定量的手法に定性的手法を従属させるというかたちでの因果推論のロジックの統合という方法ではなく、両方の長所を交えた上での共通の基準の検討という方向へ、確かにより議論が深まっている。しかし、因果プロセス観察による因果推論の有効性の判断基準は何か、何がよりよい解釈なのかを、本書が明示していないと思われるところが隔靴掻痒な感じが残る。

いずれにせよ、再読は必須の本であった。