古賀茂明『日本中枢の崩壊』

日本中枢の崩壊

日本中枢の崩壊

序章 福島原発事故の裏で
第1章 暗転した官僚人生
第2章 公務員制度改革の大逆流
第3章 霞が関の過ちを知った主張
第4章 役人たちが暴走する仕組み
第5章 民主党政権が躓いた場所
第6章 政治主導を実現する三つの組織
第7章 役人――その困った生態
第8章 官僚の政策が壊す日本
終章 起死回生の策

原子力・安全保安院経済産業省の参加にある。そして、原子力行政を進める側の資源エネルギー庁も同じ。つまり、監視する側と進める側が、実は同じ屋根の下に同居しているのだ。2011年1月には、前資源エネルギー庁間の東京電力への天下りが認められた。代々続く癒着構造……。
 しかもここにきて、原子力安全・保安院は、原子力の専門家集団でもなんでもないことが明らかになってきた。
 「日本中枢」で国を支えているはずの官僚は、実はかくも信頼できないものでありながら、しかし自己保身と利権維持のための強固な連携力だけは備えている。ここに、国民によって、強固な制御棒を打ち込まなければならない。さもなくば、老朽化した原子炉を持つ「日本中枢」の崩壊とともに、日本国全体がメルトダウンしてしまうだろう……。
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現役の経産省官僚が公然と政府や省庁を批判し、公務員制度改革を唱えている本。


中心的な主張はシンプル。今の日本は官僚が国民のために働く仕組みになっていないということ。

キャリア官僚は課長までは年功序列の横並びで昇進できる。その上の審議官以上になるとポストが少なくなるため、競争があるが、いかに国民のためになることをしたかではなく、いかに省益につくしたか(自分の省の予算や裁量を拡大させたか、天下りポストを増やしたか)かによって昇進が決まってゆくという。

民間企業は消費者や株主からのチェックを常に受けているが、役所はそうした外部からの力が働かないため、いかに省益につくすかという内向きの考えになってゆくという。
東大を卒業し、当初は意欲に燃えていた優秀な若手が、次第に視野が狭くなってゆく過程が記述されている。

また、自民党政権時代に進められていた公務員制度改革が、民主党政権で骨抜きにされてしまったことも批判されている。
民主党政権交代時の支持率の高さを利用すれば、かなりの改革ができたはずだった。しかし、与党としての能力のなさから、官僚の力を借りずには予算をつくることができず、財務省にとりこまれてしまったとされている。


どのような改革がなされればよいか。天下りを防ぐための、内閣人事局による幹部人事の一元化をする。幹部職員の身分保障は廃止し、Jリーグよる入れ替えのように評価の低い幹部は一定割合を強制的に降格させ、その代わりに一定割合を必ず昇格させる。これによって、能力のある若手を成長させる。また、民間人の登用を積極的に行う(幹部になるためには民間企業の経験を必須にしてもよいとまで言っている)。



役所の体質の問題の根深さを感じるとともに、よくこれだけ組織の圧力に従わない人が今まで生き残れているものだと思った。
こういう人がいることを知ると、役所に対してもまだ少し希望が持てる。