ジョン・ステュアート・ミル『大学教育について』

大学教育について (岩波文庫)

大学教育について (岩波文庫)

時代が時代だけにエリート段階の大学が念頭に置かれているので、とても今日の大学教育にはそぐわない記述もある。しかし、大衆化した段階では改めて大学の理念とは何かということが問われるので、こうした古典から得られる示唆は少なくない。


「大学教育の任務」、「文学教育」、「科学教育」、「道徳科学教育」、「道徳教育と宗教教育」、「美学・芸術教育」に節が分けられている。
「道徳教育と宗教教育」の節がなかなか興味深かった。


「大学が道徳的あるいは宗教的影響を学生に及ぼすことができるとするのならば、それは特定な教育によるのではなく、大学全体にみなぎっている気風によるのです。」[106]、「高貴な心情ほど教師から学生へと容易に感染していくものはありません。今までにも、多くの学生たちは、一教授の強い影響を受けて、卑俗で利己的な目的を軽蔑し、この世界を自分が生まれたときよりも少しでも良いものにしてこの世を去りたいという高貴な大望を抱くにようになり、そしてそのような気持ちを生涯持ち続けたのであります。」[106]