「どんなに仲のよい、美しい打ちとけた関係であっても、阿諛とか賞賛とかいうものは、車輪の進行に油の必要なように、ぜひなくてはならないものである。」

 トルストイ『戦争と平和』(米川正夫訳・岩波文庫版)第1巻p.58より。しばらく小説を読んでいないと思って、手にとってみました。ずいぶん前に買っていて、20代のうちに読もうと思っていたのですが、このままだとその目標が達成されそうにないという焦りも若干あったためです。登場人物が多い上に、ロシア文学は「名前のみ」、「名前+父称」、「姓のみ」、「愛称」など同じ人物を様々なパターンで呼ぶので、とにかく把握がしづらいです。なかなか読むのが進みません(主要登場人物のリストを冒頭につけてくれているのは助かります)。

 本書は私の知識では、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』に次いで長い小説でした。実際のところ、世界の長い小説のランキングはどうなっているのかと思って調べてみたところ、Wikipediaの"List of longest novels"によると、『失われた時を求めて』は2位で、さらにその上があるようです。また、『戦争と平和』は10位にも入らないようで(異なる言語の比較の問題はありますが)、よくそんなに書ける人がいるものだと、ただ圧倒される思いです。