McRae (2003) "Constraints and Choices in Mothers' Employment Careers: A Consideration of Hakim's Preference Theory"

McRae, Susan. 2003. "Constraints and Choices in Mothers' Employment Careers: A Consideration of Hakim's Preference Theory." British Journal of Sociology 54: 317-38.

 Catherine Hakimの選好理論に対する検証と批判を行っている論文です。女性の就業パターンを説明する上で、Hakimの理論を支持する結果はあるものの、一部の女性にしか当てはまらないというのが主な批判点になっています。また、Hakimは女性の選好に対する制約はないと主張しているものの、特にイギリスでは保育コストという制約が、女性の就業パターンに実質的な影響を与えていると主張されています。選好に対する制約の問題は、合理的選択理論においてもフェミニズムなどから批判されている点なので、個人的には関心のあるところです。
 本論文の批判には共感できる点も多いのですが、一方でHakimの本論文に対するリプライも重要に思われます。Hakimの反批判のポイントの一つは、「一般的な価値観と個人的な選好はしばしば一致しない」という点です。すなわち、「一般的な意見として女性は子育て中に自由に仕事に戻れるようにすべき」とある女性が考えていたとしても、自分自身はそうしたくないと思っていることがありうるというものです。そして、Hakimは一般的な価値観と個人的な選好の関連は弱いものであり、またMcRaeは前者と女性の就業パターンの関連に注目しているため、選好理論を直接的には検証していないと述べています。