Biegert (2017) "Welfare Benefits and Unemployment in Affluent Democracies: The Moderating Role of the Institutional Insider/Outsider Divide"

Biegert Thomas. 2017. "Welfare Benefits and Unemployment in Affluent Democracies: The Moderating Role of the Institutional Insider/Outsider Divide." American Sociological Review 82(5): 1037-64.

 

 寛大な失業給付は就業に対する意欲を失わせてしまうのか、それともよりよい仕事へのマッチングを高めるのかという問題に関して、制度的な文脈による異質性を考慮して分析した論文になっています。

 インサイダー/アウトサイダーの分断が大きい社会では、失業給付はむしろ失業を長期化させるだろうという仮説です。(1)有期雇用者に対する無期雇用者の雇用保護の強さ、(2)労働組合の組織率、(3)賃金交渉の中央化の度合いによって、その分断を指標化しています。

 データは、1992年から2010年のEuropean Labour Force Survey(20ヶ国)と、アメリカのCurrent Population Surveyです。これらは繰り返しのクロスセクション調査ですが、同一の社会人口学的グループが継続して観察されていると見なす、「疑似パネルデータ」に変換して分析しています。これによって、固定効果モデルによる時間不変の変数の除去を可能にしています。

 引用文献を見てはじめて知りましたが、疑似パネルデータへの変換手法にはAngus Deatonが貢献しているのですね。