Fullerton (2009) "A Conceptual Framework for Ordered Logistic Regression Models"

 

Fullerton, Andrew S. 2009. "A Conceptual Framework for Ordered Logistic Regression Models." Sociological Methods and Research 38(2): 306-47.

 

メモ
  • 順序ロジットモデルを、(1)どのカテゴリーどうしを比較するか(累積、段階、隣接)、(2)比例オッズの仮定の置き方、という2つの次元から12種類の異なるモデルに分類
  • アウトカムが2値の場合は、これらの分類はすべて二項ロジットモデルに帰着する
  • 順序ロジットモデルを用いる際は、どのような比較が意味をなすのか考えるべき
    • 従属変数が潜在的な連続変数を表しているのであれば、累積(cumulative)アプローチが適切
    • 段階(stage)アプローチは、始点と終点が定まった一連のステップが存在するとみなせるときのみに適切(教育達成、選挙における登録・投票)
    • 隣接(adjacent)アプローチは、個別のカテゴリーが特に理論的な興味を引く場合や、順序尺度に中間のカテゴリーがある場合に有用
  • 節約性(parsimony)と正確性(accuracy)の相対的な重要性も考慮すべきであり、比例オッズの仮定が成り立たない場合であっても、節約的なモデルが好まれるかもしれない
  • Brant(1990)は比例オッズの仮定に対するWald検定を提案しており、すべての係数のオムニバス検定と、それぞれの変数を別々に検定するという2つからなる
  • 累積アプローチにおける比例オッズの仮定の置き方:(1)すべての変数に置く、(2)一部の変数には置かずに自由に変化させる、(3)一部の変数には置かずに共通の要因によって変化させる、(4)すべての変数に置かない
    • (3)は「部分比例制約を伴う比例オッズ」(proportional odds with partial proportionality constraints:POPPC)と呼べる
    • 係数βが共通要因φによって乗法的に変化することを仮定する
    • 名義変数に対するstereotypeロジットモデルに似ている
    • POPPCモデルは、Hauser and Andrew(2006)によるモデルの拡張である
    • ただし、Hauser and Andrew(2006)はこのモデルを教育達成に対して段階アプローチとして使用しており、「部分比例制約を伴う条件付きロジット」(conditional logit with partial proportionality constraints)と呼んでいる
    • この仮定を累積アプローチと隣接アプローチに適用するのはこの論文が初めて
    • 部分比例制約は、Hauser and Andrew(2006)の教育達成の例のように、特定の変数の効果(社会的背景)がだんだんと弱まる(または強まる)というように理論的に考えられる場合に有用
  • 段階アプローチにおいては、後の段階に到達するためには、それ以前の段階を通過する必要があると仮定される
    • 関心の対象となるのは、条件付き確率(ある段階まで進んだことを所与とした上で、次の段階に所属する確率)である
    • それぞれの段階は不可逆的なものとして扱われ、そのため累積アプローチ、隣接アプローチとくらべて段階アプローチはより制約が強いと言うことができる
    • イベントヒストリー分析のアウトカムとして使用される順序変数は、段階アプローチのよい例である
  • 段階アプローチにおいて係数の比例性を仮定したものは、連続比率(cotinuation ratio)モデルと呼ばれる
    • clog-logをリンク関数にすると、イベントヒストリー分析でよく用いられる、比例ハザードモデルと同じになる
    • 段階アプローチにおいて、すべての独立変数の比例オッズの仮定が妥当でない場合には、Mare(1980)が教育達成の分析に用いたような逐次(sequential)ロジットモデルが適切となる
  • 隣接アプローチでは、従属変数のカテゴリーを一連の部分オッズ比としてモデル化するものであり、対数線形モデルの拡張である
  • Sobel(1997)は、順序変数が中間のカテゴリーを持つ場合に(たとえば、「どちらともいえない」)、累積モデルよりも隣接モデルを用いることを推奨している
  • 累積アプローチの例:GSS2004において、所得の4分位点を従属変数とした分析
  • 段階アプローチの例:ANES2004において、(1)選挙登録をしなかった、(2)選挙登録はしたものの投票しなかった、(3)選挙登録をして投票した、の3値を従属変数とした分析
  • 隣接アプローチの例:GSS2000・2002・2004を合併し、福祉支出に対する賛否を従属変数とした分析
  • この論文で示した2つの次元のみならず、考慮すべき事項として、(1)リンク関数の選択、(2)観察されない異質性、(3)IIAの仮定がある
    • ロジットのみならず、プロビットやclog-logもありうる
    • 段階アプローチにおいては、連続比率モデルと離散時間イベントヒストリーモデルとの類似性から、clog-logをリンク関数とするのがより適切かもしれない
    • 比例オッズの仮定が妥当でないのは、部分的には誤差分散の異質性が原因であるかもしれない
    • IIAは、「無関係」な従属変数のカテゴリーが追加・削除された際に、あるカテゴリーに対する別のカテゴリーの比率が影響されないことを仮定する(有名な赤いバス・青いバスの例)
    • 既存研究では指摘されていないものの、段階アプローチにおける連続比率ロジットモデル、逐次ロジットモデルはIIAの仮定を必要とする

 

感想
  • 比例オッズを仮定するモデルは、置かないモデルにネストされた関係になっているため、尤度比検定でより適合するモデルの選択ができるのですね
  • 分析例におけるAICBICによる比較では、それぞれの性質上そうなりがちなのですが、AICはより複雑なモデルが採択する傾向にあります
  • 段階アプローチのIIAの仮定は、教育達成の例では多項ロジットの場合と同様に、高校と大学の間に短大・専門学校が選択肢に追加されるときなどに問題になる感じでしょうか