Horowiz (2018) "Relative Education and the Advantage of a College Degree"
Horowiz, Jonathan. 2018. "Relative Education and the Advantage of a College Degree." American Sociological Review 83(4): 771-801.
導入
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過去80年にわたって、アメリカにおける大学進学率は大きく上昇
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大学教育に対するリターンは上昇しており、研究者もまた大学教育の拡大をよいものとして扱うことが多い
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他方で、教育の相対的効果に対する関心
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大学教育の拡大とともに高技能の仕事の需要が増えるとは限らず、低技能の仕事に押し出される大卒者が出るかもしれない
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相対的教育仮説は、大学教育による賃金プレミアムが低下していないことから、棄却されてきた
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しかし、相対的教育仮説が当てはまるのは、技能の利用(skill utilization)であり、賃金は間接的に影響しうるにすぎない
相対的教育仮説の概要
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相対的教育仮説の主張は次の3つに要約される
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(1)他のすべての条件が等しければ、良好な仕事のような希少資源を得るためには、人々は他の潜在的な志願者よりも多くの教育を必要とする
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(2)良好な仕事と高い社会的地位を得るためにより多くの人々が大学に行くにつれ、学歴は雇用主が志願者を絞り込む上で役に立たなくなる;同じ仕事を人々が争う上で、雇用主は学歴要件を引き上げる
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(3)大卒学歴の優位性は、比較の対象となる人々の学歴に依存する;学歴の低い人々の集まった中では望ましいものとなるし、エリートとの比較では大卒学歴は最低限の資格となる
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学歴は雇用主に対して、求職者が望ましい性質を持っていることを伝えるシグナルとなる
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学歴は技能の獲得を表すものである一方で、位置財(positional goods)でもある
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つまり、その価値の少なくとも一部は相対的である
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Hirsh(1976)は仕事待ち行列(job queue)の比喩を用いることで、位置財の鮮明な説明をした
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相対的教育の論者の中でも、学歴がどのようなシグナルを潜在的な雇用主に伝えているかについては、論争がある
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仕事の数が増えることなしに教育拡大が起きることで、より多くの大卒者が高技能の仕事につくことができなくなってしまう
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こうした人々は、「過剰に教育を受けた」(overeducated)、「過小な仕事についた」(underemployed)と呼ばれる
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Hirsch(1976: 5)が述べるように、「みんながつま先立ちをしたら、誰もよく見えない」のである
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技能の過小利用(skill underutilization)に関する研究では、これを技能のミスマッチの特殊タイプとみなす
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相対的教育理論は実証研究でも支持されてきており、たとえばBol(2015)は教育拡大によって先進産業国における大卒学歴の絶対的な収益率は低下したことを示しているものの、大規模な研究はもっぱら1970年代のものであり、むしろ近年の研究は相対的教育効果を棄却するものが多い
教育への金銭的リターン
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相対的教育理論は大卒学歴の価値が低下したと主張するにもかかわらず、アメリカにおける過去数十年間にわたる大卒学歴の金銭的リターンは増加したという証拠がある(Goldin and Katz 2008)
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アメリカにおける相対的教育理論への主要な反理論は、「技能変更的技術変化」(skill-biased technological change: SBTC)である
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20世紀後半に、教育拡大によって大きな技術変化が起き、大卒者の供給の増加よりも需要の増加が上回ったというものである
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Liu and Grusky(2013)は、教育への金銭的リターンの増加は、職業レベルの分析技能(analytic skill)へのリターンの増加に駆動されていることを示しているものの、これはSBTCと矛盾するものではない
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Mouw and Kalleberg(2010)も、賃金の不平等拡大が、経営者やコンピュータのシステム・アナリストなどの少数の職業によって引き起こされているものであることを示しており、学歴自体による効果は1992年以降変化していないことを示している
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STEM領域などの高技能労働者の供給が不足している仕事では、賃金の拡大が起きていない(Teitelbaum 2014)
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SBTC理論には大きな欠陥がある
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その主張は、賃金格差の変化が技能の供給・需要の変化によるものである場合においてのみ正しい
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教育による賃金プレミアムの研究は重要であるものの、賃金は仕事待ち行列を超えた制度的要因によって統制されているものであるため、相対的教育仮説を棄却することはできない
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これを真に評価するためには、大卒者が低技能の仕事によりつきやすくなっているかどうかを分析するべきである
異なる時間のトレンド、性別によるトレンドを考慮する
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教育と働き方の変化の関係を研究する際に注意すべき2つの問題:(1)年齢、時代、コーホートによって生じうる疑似相関を取り除くべき、(2)1960年以降の教育と労働参加の男女格差を考慮するために、男女は別々に分析すべき
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教育水準と技能利用の変化とともに起こった年齢・時代・コーホートの変化には何があるか
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マクロレベルの技能利用に影響した制度変化として、雇用主が不要な労働者をレイオフ・移転する傾向が強まったこと、
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K-12のカリキュラムの変更は、その後の世代の技能構成に影響した
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後のコーホートは大卒学歴を持ちやすいものの、もっとも若いためにキャリアが進んでいない段階である可能性が高い
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APCモデルはまた、人種・婚姻・地域が技能利用に与えうるバイアスを統制することもできる
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女性の大学進学・卒業率は過去50年間に大きく上昇し、現在では男性の卒業率をわずかに上回っている(ただし、エリート大学への応募・入学率では女性は未だ下回っている)
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女性は看護や教育などの女性化された領域に進学しやすい;これらの専攻では、分析的・数量的技能よりも、言語的技能がより成長する
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男女では、3つの異なるトレンドが存在すると考えられる
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(1)大卒女性は1970年代にくらべて高い地位の仕事へアクセスしやすくなっており、高技能の職業において大卒学歴を活かす機会が増えている
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(2)高学歴の男性は仕事を獲得する上で、高学歴の男性だけではなく女性との競争が増えており、このことによって大卒男性の技能利用は低下していると予想される
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(3)女性的な職業における需要の増加と、男性的な職業における女性の進出によって、大学進学率の上昇は女性の仕事獲得を容易にすると予想される
方法
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コーホート内の競争の増大によって、高学歴の人々が低技能の仕事に押し出されるのかどうかを問う
データ
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毎年3月にCPSの一環として行われている、The Annual Social and Economic Supplement(ASEC)を利用する
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1971~2010年のデータを使用
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フルタイムではなく、パートタイム労働を好んで選んだパートタイム労働者は除外
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25~62歳にサンプルを限定
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O*NETデータベースの技能利用得点を用いる
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確証的因子分析によって、各職業における言語的・数量的・分析的技能の予測得点を構成
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Boese(2001)らの指摘に従い、複数年ではなく単年のデータベースを使用
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技能得点は年によってほとんど変化しないことがわかっている
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このことから、本研究の知見は仕事自体の変化ではなく、職業につく人々の量的変化として解釈される
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各技能の因子得点は、次の指標より構成
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言語的技能:口述理解(oral comprehension)、記述表現(written expression)
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数量的技能:数理的知識、数理的推論技能
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分析的技能:実地学習技能、複雑な問題解決技能
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異なる年の仕事得点を調和するために、Autor and Dorn(2013)とDorn(2009)による、一貫した職業コードを使用
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相対的教育とSBTC仮説を検証するために、3つの独立変数を作成:(1)コーホートレベルの学歴、(2)個人レベルの学歴、(3)両者の交互作用項
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地域によって異なる教育水準を反映するために、サンプルを9つのセンサス地域に分割し、これらの地域を5年ごとに分割し、大卒学歴を持つ人々の比率を計算した。
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アメリカでは教育年数よりも、大学卒業が仕事のアウトカムに対してより効果を持つため(Bills 2016)、ダミー変数化したほうがよい
分析
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6つの回帰モデルを推定する
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年齢効果には、線形・二次・三次の関数系を使用
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時代効果には1年間隔を使用
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コーホート効果は5年ごとにグループ化
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時代とコーホートはランダム変数ではなく、ダミー変数として扱われるため、Yang and Land(2008)はこの方法を「固定効果」モデルと呼んでいる
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しかし、「固定効果モデル」は、観測単位内の変化のみを記述する経済学における回帰分析との混同を起こしうるため、「ダミー変数」モデルという呼び方を好む研究者もいる
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APCモデルの最良の推定方法に関しては論争がある
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反差別法の影響を考慮するため、人種×コーホートの交互作用を投入
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地域経済の特徴は、絶対的な教育水準と相関している可能性があるため、センサス地域×教育水準、センサス地域×時代の交互作用を投入
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共変量を減らしたモデルにおいても、分析結果は頑健であることを確認
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データには100万人以上の男性、75万人以上の女性が含まれており、標準誤差は相当に小さい
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ほとんどの変数が0.1%水準で有意になるため、「実質的」、「実用的」な有意性を判断するための基準が必要
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O*NETにおける仕事内容に関する記述の質的な差異を、技能得点の量的な差異と比較
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技能得点の差が0.2ポイント未満である場合には、職業間の質的な差異を特定するのが難しいため、0.2ポイント未満の差は実質的に有意義ではないと判断
知見
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6つの固定効果/ダミー変数モデルによる結果は、男女間でおおむね類似している
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大卒学歴を持つ人々はそうでない人々にくらべて、より技能を利用した仕事につきやすい
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しかし、学歴レベルと大卒比率の交互作用は負であり、大卒者が増えた際に、大卒学歴の持つ強みは減少することを意味する
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さらに、学歴レベルと大卒比率の交互作用は負であるだけでなくその係数の絶対値は、大卒比率の増加に伴う労働者全体における技能レベルのプラスよりも大きい;つまり、教育拡大によって技能利用は増大するものの、この効果は大卒者の増加によって低下する
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この知見は相対教育仮説と整合し、SBTCと整合しない
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この効果の解釈として、「絶対的」解釈と、「文脈的/格差的」解釈がある
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解釈を容易にするために、他の変数の値を固定し、大卒比率を8~40%の間で変化させる
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「絶対的」解釈では、コーホートの競争が増すにつれて大卒者が低技能の仕事につくかどうかを診断する
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大卒者の比率を増加させても、技能利用の低下はおおむね0.2から0.4ポイントの間に位置し、大きくはない
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最大の減少は男性の分析的技能の利用であり、大卒者が8→40%に増加することで、-0.45ポイント低下する
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分析的技能利用の低下は、需要の低下・供給の増大の双方から起こりうる
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Liu and Grusky(2013)は、言語的・数量的技能よりも分析的技能の利用が増加していると述べているため、上記の結果は分析的技能の供給過剰が理由と考えられる
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もう1つの「文脈的/格差的」解釈では、大卒者/非大卒者間の技能利用格差を、大卒比率の高低ごとに比較する
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このアプローチでは大卒者の強みが、大卒者が増えるにつれてどのように変化するかに注目する
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言語的技能に関して、大卒者の技能利用の絶対的な低下はわずかであるものの、非大卒者とくらべた際の優位の低下は相当のものであり、男女ともに約-0.5ポイントである
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同様に分析的技能においても、非大卒者とくらべた大卒者の優位の低下は大きく、男女ともに約-0.6ポイントである
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大卒者の優位が低下したとはいっても非大卒者と比べた際に男性では、分析的技能の利用において依然として1.3ポイントも高い;ただし、今後さらに大卒者が増えることで、その相対的優位はさらに低下するかもしれない
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重要な問いの一つは、男女で技能利用のレベルは異なるか、また教育拡大につれて変化しているかである
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他の変数を統制すると、男性は数量的・分析的技能の利用が高く、女性は言語的技能の利用が高い
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これは男性がSTEM領域の職業により多くついていることにくわえ、伝統的な男性的・女性的職業において技能利用の差異を反映している
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男性は女性よりも数量的・分析的技能を利用しているものの、大卒者の増加に伴う技能利用の低下ペースは女性よりも急激である
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これは、(1)より多くの大卒女性が男性的職業につくようになったことと、(2)大学教育が拡大するにつれて女性的職業の需要が増えたことによるものであると考えられる
考察
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既存研究は技能利用を直接測定するのではなく、賃金格差を分析していたため、大卒者の増加によって大卒者が低技能の仕事に押し出される効果を捉えられなかった
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この研究の拡張として、大学の威信・専攻、大学が多い地域であるかどうかを区別することが考えられる
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技能利用のミスマッチとして捉えるのみならず、4つの研究の方向性が考えられる
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(1)SBTCではなく制度的な要因の研究
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教育に対する金銭的リターンが増大していることに疑いはない
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教育拡大によって大卒者が高技能の仕事につきやすくなったわけではないという分析結果を踏まえると、競争が増したにもかかわらず教育による賃金プレミアムは増大しているのである
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(2)キャリア初期と後期における技能利用の区別
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キャリア初期の技能利用が低いことによって、累積的な不利に結びつくかもしれない
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コーホートにおける競争は、職歴のないキャリア初期においてもっとも熾烈であるかもしれない
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(3)性別分離の変化による説明
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女性の数量的技能の利用には低下が見られず、その他の技能においても男性ほど相対的教育効果による大卒学歴の優位の低下は見られなかった
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既存研究によれば、教育と技能の関係における性別格差の変化は、大学の専攻・職業による性別分離の低下によって一部説明される
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今後の研究は、大学教育の拡大、性別分離の低下、性別・学歴特有の仕事待ち行列の関係を明示的に検証すべきである
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(4)異なる人生の領域への注目
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職業は社会生活を構造化し、健康、幸福に影響するとともに、余暇時間を制約する
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大卒者が望ましくない仕事につきやすくなることで、教育に対する社会的リターンも低下する可能性がある
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教育が文脈によらない絶対的な財であると信じている社会学者はほとんどいないにもかかわらず、時間によって異なる教育の効果に注目する研究は多くない
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この研究はまた、より多くの生徒を大学に進学させるのは不平等を減らす上で有効であるのかどうかを問いかけている
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大学へ行く人々が増えることで、技術発展と経済成長が進むと経済学者は主張してきており、この視点からは大学進学の拡大は正当化される
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Hout(2012)が説得的に述べるように、「個人」を大学へ進学させることは、その個人の人生におけるアウトカムを改善させる;さらに分析結果が示すように、大卒学歴が労働市場で持つ価値は未だ大きい
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しかし、高技能の仕事が十分に増えるのでない限りは、「全員」を大学へ進学させることは、より多くの大卒者が低技能の仕事につくことに帰結するのであり、また大卒学歴の価値が維持される保証もないのである
感想
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Liu and Grusky(2013)以降、O*NETデータベースを使用した研究が増えましたね
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鍵となるモデル結果を提示→予測値を用いて関心となるグループに絞って比較という流れの構成が増えているような印象を受けます