水瀬ケンイチ(2017)『お金は寝かせて増やしなさい』

 

お金は寝かせて増やしなさい

お金は寝かせて増やしなさい

 

 

 投資信託の一種であるインデックス投資に関する本です。自分にとっては疎い分野で、日経新聞でもだいたい株式・金融市場に関する欄は読み飛ばしてきたので、本書はいろいろと勉強になりました。

 著者がインデックス投資を薦める理由は、それが「もっとも儲かる方法ではないけれども、手間をかけずに儲けるには最良の方法」であるためです。はじめに資産の配分比率さえ決めればあとはドルコスト平均法によって定期的に定額を積み立てるだけでよく、銘柄の選択や売買のタイミングに頭を悩ませる必要がないという、本業ではない個人投資家における大きなメリットを挙げています。

 どのインデックスファンドがよいか、口座はどこで開設するべきかという実践的な面だけではなく、インデックス投資がなぜよい結果を上げられやすいかという理論的な面も素人向けにわかりやすく解説されています。たとえば、分散投資によるリスク(平均期待リターンからのばらつき)の軽減などですが、この辺りは多少なりとも統計学の知識がある自分は頭に入りやすいところがありました。

 また、資産の構成比率を決める上で著者が強調しているのは、「期待リターンではなく、許容できる最大のリスクを基準にすること」とされます。プロスペクト理論にも触れられているように、人々は利益よりも損失により大きなウェイトを置いて評価する傾向にあるので、許容できる最悪の事態を想定することで長期的に安心した投資生活を送ることができるとのことです。ここでも、本業ではない個人投資家のためのメリットが重視されているように思います。