村上春樹(2017)『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』

 

騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(上) (新潮文庫)

騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(上) (新潮文庫)

 
騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(下) (新潮文庫)

騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(下) (新潮文庫)

 

 

  • 先日、第1部を読んだときに、「いかにも村上春樹的」という感想を抱いたわけですが、第2部に入ってかなり印象が変わりました。
  • 後半部が秋川まりえの視点で展開し、また最終部で「私」が子どもと過ごす場面が描かれるのは新鮮でした。
  • 東日本震災後の世界というきわめて現実的かつ具体的な表象が出てくることにも衝撃を覚えました。もちろん、今までも『ねじまき鳥クロニクル』のノモンハン事件であったり、本書でもナチスドイツのオーストリア併合であったりといった現実の事件が出てくることはあったわけですが、やはり現代かつ人々の記憶にも新しい出来事が描かれると、印象もだいぶ違ってくるのではないでしょうか。
  • 本書の書評を体系的にチェックしたわけではありませんが、こちらの記事にある下記の記述には首肯しました。

「現行の世界」の何かを「明確にブチ殺して入れ替わる」ようなものではなく、あくまで自然に「生まれ変わった自分」が、「満足できる生き方」が自然と「社会の中に見つかる」話になっている。

 

  • 騎士団長を刺殺する場面や、顔ながの通ってきた〈メタファー通路〉に飛び込んでいく場面も、過去作の主人公だともう少し逡巡しそうな気もしたのですが、そうすることが当たり前というような決断のよさでしたね。