West and Nikolai(2013)「福祉レジームと教育レジーム――ヨーロッパ(とアメリカ)における機会の平等と支出」
West, Ann and Rita Nikolai. 2013 "Welfare Regimes and Education Regimes: Equality of Opportunity and Expenditure in the EU (and US)." Journal of Social Policy 42(3): 469-93.
- 分析は指標の使い方など勉強になったのですが、フランスが大陸ヨーロッパではなく、地中海のクラスターに分類されたことについて、特に説明がなかったのが若干気になりました。先行研究で導出された分類と似ているとも書かれていたのですが、フランスに関してもそうなっているのでしょうか。
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福祉レジームと教育の関係に関する比較研究を発展させることを目的として、機会の(不)平等と、公的支出に対する教育支出の優先度という2つの次元を分析にくわえる
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機会の平等という用語の使用法には混乱があり、(1)平等なインプットの提供、(2)異なる教育水準へのアクセス、(3)総合的な学校へのアクセス、(4)教育のアウトカムの平等といった複数の意味を有する;ここでの分析には、平等なインプットの提供以外の3つの次元を含める
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分析にはヨーロッパ14ヶ国とアメリカを含める
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機会の平等:アクセス
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就学前教育を受けている3歳児の比率、あるいは施設ベースのプログラムに参加する3~6歳児の比率
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機会の平等:就学
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最初の選抜が起きる年齢と、15歳時点における学校タイプの数
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標準化された外部試験が存在するかどうか
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政府管下の私立学校(政府による助成が一定程度)と、政府とは独立した私立学校に就学する生徒の比率
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一般教育・職業教育に就学する生徒の比率
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機会の平等:アウトカム
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PISAにおける学力達成の格差(95パーセンタイル値と5パーセンタイル値の差)
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18~24歳人口において後期中等教育を修了していない人々の割合
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25~34歳人口において高等教育を修了している人々の割合
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支出
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教育レジームを分類する主要な特徴は、最初の選抜が起きる年齢、15歳後の学校タイプの数、教育支出である
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すべての国々は義務教育期間において非選抜的で公的に助成された、統合的な学校システムを有しており、16歳時まではトラッキングはない
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読解の得点が低い水準の15歳生徒の比率は平均以下であり、読解得点と社会的背景の関連も平均以下である
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就学前教育への参加度合いはフィンランドをのぞいて平均以上である
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職業教育プログラムへの参加は平均以上であり、中退者の比率は低い
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25~34歳時点の高等教育修了者は平均以上である
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公的教育支出の水準は平均以上で特に中等・高等教育において高い
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教育の私的支出の水準は低い
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大陸ヨーロッパ(オーストリア、ベルギー、ドイツ、オランダ)
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学校システムは高度んトラック化・階層化されており、10~12歳において選抜が起きる
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読解得点の上下格差は平均以上であり、オランダをのぞいて読解得点と社会的背景の関連も平均以上である
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就学前教育の参加比率は高い
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15歳以上において職業教育プログラムへの参加度合いは高く、中退者の比率は低い
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25~34歳時点の高等教育修了者の比率は国によって異なる
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教育の公的支出はすべての教育段階において平均的である
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階層化された教育システムを有しており、最初の選抜は13~15歳時点で起きる
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読解得点が低い水準の生徒比率は高い傾向にあるものの、読解得点の上下格差と読解得点と社会的背景の関連は国によって異なる
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就学前教育への参加比率はギリシャをのぞいて高い
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職業教育プログラムへの参加比率は国によって異なり、中退者比率はフランスを除いて高い
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25~34歳時点の高等教育修了者の比率は国によって異なる
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公的教育支出の比率は平均以下の傾向にある
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最初の選抜は15~16歳時点で起きる
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読解得点の上下格差は平均より大きく、他方で読解得点と社会的背景の関連は国によって異なる
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就学前教育の参加比率は国によって異なる
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職業教育プログラムへの参加比率は低く、中退者比率はアメリカを除いて高い
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25~34歳時点の高等教育修了者の比率はすべての国々において高い
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用いた指標は既存研究とは異なるものの、4つのクラスターはGreen et al.(2006)やCastles(2004)によって導出されたものと似ている
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大陸ヨーロッパと地中海の国々の区別を強調した既存研究とも一致する結果である