Evans et al.(2018)多元的な社会的アイデンティティーの交差点に位置する健康の不平等をモデル化するためのマルチレベル・アプローチ

 

Evans, Clare R. et al. 2018. "A Multilevel Approach to Modeling Health Inequalities at the Intersection of Multiple Social Identities." Social Science and Medicine 203: 64-73.

 

  • 階層ベイズモデルに以前から関心がありつつも、具体的に自分で適用してみたい事例がなかなか思いつかなかったのですが、このフレームワークはなかなか面白そうだと思いました。

 

  • 健康の不平等を複数の社会的アイデンティティの交差システムとして捉える
  • アメリカの成人サンプルにおけるBMIを従属変数とする
  • ジェンダー(2カテゴリー)、人種・エスニシティ(3カテゴリー)、学歴(4カテゴリー)、収入(4カテゴリー)、年齢(4カテゴリー)の組み合わせからなる2*3*4*4*4*=384の「交差階層」(intersectional strata)をモデルに含める
  • 従来的な固定効果モデルによって交差性を捉えようとすると、多くの交互作用を推定することになる
  • これに対して、個人が交差階層にネストされているとみなすマルチレベルモデルを採用する
  • (1)マルチレベルモデルではサンプルサイズが小さい層のランダム効果は、より全体平均の値に引きつけられ、安定した推定値が得られやすい、(2)従属変数の全体の分散を個人レベルの分散と層レベルの分散に分割することで、それぞれの交差階層間・階層内の異質性を数量的に表すことができる
  • MCMCによるベイズ推定を行う
  • マルチレベルモデルでは固定効果モデルにくらべて安定した推定値が得られた
  • マルチレベルモデルを使用した際に、ヌルモデルと主効果を投入したモデルによって、層レベルの分散がどの程度縮減したかを表すことができる;これは、主効果を投入した上でも説明されない層レベルの分散(交互作用に起因しうるもの)がどの程度あるかを示す
  • マルチレベルモデルを用いた場合にも、関数形の仮定や、層内ではそれぞれの観察がi.i.d.に従う仮定などが必要になる