Brigitte Le Roux & Henry Rouanet(2010=2021)『多重対応分析』

 

 

  • Sageの緑のシリーズから翻訳されたものになっています。
  • 訳注がかなり詳しく、翻訳する際の工夫、関連する概念、日本語の関連書籍などが紹介されていて勉強になりました。ただし、「原文の○○という語に対して△△という訳語あてた」ということも逐一訳注にするのは若干くどく感じられ、本文中にカッコ書きで補足するというような形の方が読みやすいように思いました。
  • 幾何学的データ解析」として多重対応分析を位置づけ、線形代数に基づいて基礎的な部分がかなり詳しく書かれています。「データ解析は,きちんと数理的に定式化すれば,結局のところ,固有ベクトルを求めるだけである.データ解析に関するすべての科学や手法は,対角化すべき行列を見つけることにすぎない」(p.2)。
  • 現実のデータを使用した例も豊富で、第何次元まで解釈すべきか、ある軸におけるグループごとの平均点の差はどれくらいであれば「注目すべき差」とみなすべきか、など実践的なアドバイスも見られます。
  • 基本的には多重対応分析を記述的手法(標本の大きさに依存しない)として位置づけつつも、5章では統計的推測へと拡張されます。実際の論文を見ても多重対応分析で何らかの検定を行うというのはあまり知らなかったのですが、著者としては幾何学的なデータ解析においても統計的推測を積極的に用いていくべきという考えのようです。