成瀬尚志編(2016)『学生を思考にいざなうレポート課題』

 

 

  • 以前にオンライン飲み会の最中に、先輩に教えてもらった本です。
  • 科研費のプロジェクトの一環として刊行されたもののようで、こういうテーマでも1つの研究課題になるのは面白いですね。

 

  • 授業内容から組み立て始めるのではなく、「レポート課題から授業を設計する」という視点の転換。
  • 「レポートの執筆を通して、学生が自分の頭を使いながら考え、それにより学びが深まるような授業」を目指すべき。
  • インターネットの普及で剽窃・コピペが容易になったけれども、「剽窃・コピペはいけない」という指導だけでは不十分で、インターネットを活用することを前提とし、それでも問う意味のあるレポート論題を設定すべき。
  • たとえば、「功利主義とは何か」という定義を問うようなものだと、コピペが簡単にできてしまう。
  • 問いを学生自身が立てる論証型レポートは、学生がルールのわからないゲームをさせられているような感覚を持ってしまう可能性がある。
  • 学生自身がレポートで目指す目的やよさの基準をを理解した上で、創意工夫ができることが重要。
  • 論証型レポートに対して、具体的かつ単一のことを求める論述型レポートが考えられる。
  • 授業内容やテキスト、インターネット上の情報などの「素材」を学生がそのまま用いるだけでは、創意工夫は存在しない。
  • 「まとめなさい」、「説明しなさい」という論題では、素材を書き写しただけのレポートになりやすい。
  • 学生の創意工夫を、「形式面の創意工夫」と、「内容面の創意工夫」に分けて考えることができる。内容面の創意工夫をそれほど求めない場合に、形式面の創意工夫を求めるという方法がありえる。たとえば、「授業内容を小学生にもわかるように口語調で説明しなさい」、「正義とは何かについて対話篇で論ぜよ」といった論題。
  • 内容面での創意工夫の例としては、具体例を提示しながら説明することを求めるというもの。「正義が善に先行すべきと考えられる具体的事例を、テキストに載っている事例以外で挙げよ。なぜ優先されるべきなのか理由も述べよ」。
  • レポートを執筆する際のプロセスについての記述をもとめるという方法。「正義とは何か説明しなさい。その際、どのような文献をなぜ調べたのかなど、レポート執筆のプロセスも含めて書きなさい」。
  • レポートを評価する際のルーブリックの活用。

 

  • 自分の授業を振り返ってみると、わりと資料は詳しく作っていることが多いので、その素材をいかにそのまま流用できないようなレポート論題をつくるか、ということはもっと考えるべきでしょう。論題の設定としては、どちらかというと内容面での創意工夫をどう求めるかという方に頭を悩ませていたことが多く、形式面での創意工夫についてはもっと取り入れてみたいと思いました。