岡田憲治(2019)『なぜリベラルは敗け続けるのか』

 

 

  • 「私は本書執筆で『友』を喪う覚悟を決めた」と帯にあります。これ以上の民主主義の破壊をどうにか止めたいという思いで、あえてこれまでに共に活動してきたリベラル陣営に対して、自省を促すスタイルの本です。本書が刊行されたのが2019年ということで、希望の党をめぐる野党の迷走に関する記述が多めだという印象を受けました。
  • 日本の野党勢力はいつまで経っても「オトナ」になれないとし、極端な善悪の二分で考えようとする傾向や、自分が絶対に正しいという立場から相手を「お説教」する傾向、「ゼニカネ」の問題を軽視する傾向などが批判されています。
  • 先日、法政大の山口二郎先生が本書の著者をTwitter上で批判しているのを目にしました。市民連合として野党間の協力に地道に携わってきた山口先生の立場からすると、いつまでも「オトナ」になれないという本書の主張は的外れという思いがあったのでしょうか。
  • 野党共闘がうまく行っていないのは、「綱領」と「公約」の区別を曖昧にしたまま、ぼんやりと「政策」の話をし続けているからではないかという指摘がありました。「綱領」が志を共にする人々が未来に対する夢やビジョンをまとめた決起の言葉、すなわち「内向きの言葉」であるのに対して、「公約」(マニフェスト)は選挙の際に有権者に訴えかける「外向きの言葉」であるとのことです。そのため、日本共産党が綱領において「日米安保の破棄」を掲げていても、それは公約という4年間で実現する政策目標とは異なるので、野党間で協力可能な「公約作り」は可能だ、とのことでした。この綱領と公約の区別は、共産党に対する連合や国民民主党の主張に対して、どのように考えるべきかといった面で勉強になりました。