Redbird and Grusky(2015)「レント、レントシーキングと社会的不平等」

 

Redbird, Beth, and David B. Grusky. 2015. "Rent, Rent-Seeking, and Social Inequality." In Emerging Trends in the Social and Behavioral Sciences. Wiley. (Available from http://onlinelibrary. wiley. com/book/10.1002/9781118900772)

 

  • 賃金プレミアムとして現れるレントの例として典型的なものに、(1)供給が過小な生まれつきの能力、(2)最低賃金、(3)労働組合への加入、(4)勤労所得税額控除(EITC)などの賃金補填を伴う移転プログラムがある。
  • 職業の閉鎖性に注目し、Current Population Surveyから、(1)労働組合への加入の有無、(2)職業に関する準学士(associate degree)を保有しているか、(3)資格免許(licensure)を要する職業で働いているかどうか、(4)50%以上が大卒学歴を有する職業であるかどうか、の4つを指標に設定。
  • 階級構造の下位に位置する職業では、少なくとも1つの閉鎖性に該当する人々の割合が低下する一方で、上位の職業では逆に該当する人々の割合が上昇している。この違いは、下位の階級では労働組合の衰退の影響で閉鎖性が低下しているのに対して、上位の階級では大卒学歴や資格免許の要件による閉鎖性が高まっていることによる。
  • 所得へのリターンの大きさを比較すると、資格免許を要件とする職業であるよりも、労働組合への加入の効果がより大きい。階級構造の下位の職業でも資格免許による閉鎖性は高まっているものの、労働組合の衰退の効果を補うほどのものとはなっていない。こうした階級構造下位により集中したレントの崩壊が、アメリカにおける所得格差拡大の一部を説明している。