橋爪大三郎・中田考(2021)『中国共産党帝国とウイグル』

 

 

 習近平政権になってから、ウイグル人に対する締め付けが一段と強まった。アメリカ政府によれば、「ジェノサイド」(民族大虐殺)である。世界の非難が集まっている。けれども、習近平政権は意に介する様子がない。

 これには、はっきりした意図がある。人権を蹂躙し、人命を犠牲にし、これだけのことをやるからには、よほど大きな目的や意図があると考えなければならない。ウイグル問題を手がかりに、習近平の頭の中身を、合理的に読み解かなければならない。

Kindle版 36-8]

 

  • 橋爪先生は中国語が堪能であり、配偶者が中国人という話は知っていましたが、中国共産党による人権侵害に対してかなり批判的な姿勢をとっているというのは、本書で初めて知りました。ただし、頭ごなしに否定するのではなく、「合理的に読み解く」べきというのが、ふだん中国の政治・外交関連のニュースに触れている時にはあまり考えたことがありませんでした。

 

中田 今のお話を伺っていて、これはキリスト教の在り方に似ているという感じがしました。つまり、国家と教会の関係ですね。橋爪先生も先ほどおっしゃったとおり、今の共産党は教会に近いものであるということ。共産党も教会も任意組織であり、それらは地上の権力を持っていて、人びとを指導すると。共産党は任意団体でありながら二重権力である政府も指導しているわけですね。

 しかし、西洋のほうでは政教分離をするという発想が、宗教権力を肥大化させないための解毒装置になっていると思うんですが、共産党は自分たちのイデオロギーが宗教であるとは認めないので、それと逆行していて、どんどん国家と党が一体化している方向に進んでいると思いますし、それが問題になっている。

Kindle版 1518-25]