Elbers(2021)「異なる時点や場所による分離の差を検討するための方法」

Elbers, Benjamin. 2021. "A Method for Studying Differences in Segregation Across Time and Space." Sociological Methods & Research.  doi: 0049124121986204.

 

  • 分離の強さの変化を周辺分布の変化によるものと、「純粋な分離」の変化によるものに区別できることが望ましい。
  • 分離指数が周辺分布に依存することは、1つの時点における分離の「平均的な」水準を特徴づけるためには望ましいが、異なる時点や場所による分離の水準を比較する上では問題となる。

 

  • 合計Uのorganizational unitsと、合計Gのgroup unitsがあるとき、U×Gのクロス表を考える。
  • UとGのどちらの周辺分布にも依存しないのは、A指数のみ。H指数が周辺分布と独立でないことは必ずしも十分に理解されていない。

 

  • 周辺分布とは独立した構造的な分離の原因を検討する方法として、主な解決策は3つある。
    • (1)Charles and GruskyによるA指数を用いるアプローチ。A指数はそれぞれの職業における男女のオッズ比を計算し、それぞれの職業を等価に重みづけて集計する。そのため、それぞれの職業の規模が大きく異なる場合は問題となりうる。また、同等の分離の水準を持つ2つの職業が統合された際には分離は変化すべきではないという、organizational equivalenceの基準をA指数は満たさない。
    • (2)Karmel and Maclachlan(1988)による本論文に類似したアプローチ。周辺分布の変化と構造的変化のそれぞれどちらかのみを反映した反実仮想的なクロス表を用いる。これはiterative proportional weightingによって作成できる。この方法の欠点として、行と列方向の交互作用が分解に含まれることと、新規に出現あるいは消滅する職業を考慮できない。
    • (3)Mora and Ruiz-Castillo(2009)によるアプローチ。2つの時点におけるM指数を分解する。ただし、この方法で定義される「構成不変」(composition-invariant)な変化とは、オッズ比に基づいて定義される構造的変化とは異なる。また、この方法では2つの分解法があり、それぞれで構造的変化の大きさが異なりうる。
  • 本論文では、(1)~(3)の方法を拡張・統合する。Charles and Gruskyはいかなる構造的変化もオッズ比に反映されるべきだとする重要な洞察をもたらした。Karmel and MaclachlanはIPFを用いて反実仮想的なクロス表に到達した。Mora and Ruiz-Castillo(2009)はエントロピーに基づいたM指数の強みを明らかにした。

 

  • 基本的なアイディアは、t1のクロス表を周辺分布のみt2と一致するように調整した反実仮想的なクロス表を作るというものである。
  • IPFによる周辺分布の調整は必ず収束する。
  • 反実仮想的なクロス表からM指数を分解したときに、1つのありうる批判はt1を基準とするかt2を基準とするかで結果が微妙に異なることである。これは分解の方法論の中では経路依存性の問題として知られる。この解決法としては、 Shorrocks (2013)によって提案されたShapley分解、すなわちありうるすべての分解のパターンを考慮するというものがある。2時点における分離の差の場合は、単に2つのシナリオの平均値をとるというものになる。

 

  • 2時点間での特定の職業の創造や消滅を考慮するためには、M指数がbetweenとwithinに分解できることを利用する。すなわち、「残存職業・消滅職業間の分離」と、「残存職業内の分離」および「消滅職業内の分離」の加重平均に分解して考える。

 

  • 分離指数に向けられる懸念の1つとして、比率の小さいセルに基づいて計算されることがある。Winship(1977)は非類似指数Dの期待値が大きくばらつくことを示した。これと同様の設定を置いたときに、M指数とH指数はばらつきが小さい。比率の小さいセルでは、ln(p_gu/p_g*p_u)の値は大きくなるものの、加重平均を取る際にp_guを乗じることでその影響が緩和されるためである。