齋藤純一『公共性(思考のフロンティア)』

公共性 (思考のフロンティア)

公共性 (思考のフロンティア)

アレントハーバーマスの思想を中心に、「公共性」という多義的な言葉を解説した入門書。

入門書ではあるが、単に思想史を追っただけではなく、筆者の考えが積極的に示されている。
筆者としては公共性を、人々の間に成立する共約不可能な複数性として、新たな社会的な連帯のあり方として位置づけようとしたいらしい。

この本を読むまで、ハーバーマスの考えを結構誤解していたようだ。人々の理性に基づく討議によって一つの合意を形成し、市民社会を維持してゆくというユートピア的な思想だと思っていた(合意に達することなんて実際にはありえないから)。

しかしハーバーマスで重要なのは、議論が誰に対しても開かれているということと、異なった主張を持つ人々がそれぞれ認められ、排除されてはならないということにあるのだと分かった。