芦名定道ほか(2022)『学問と政治――学術会議任命拒否問題とは何か』

 

  • 報道になるような新しい話題がないので世間的には下火になった感がありますが、学術会議の会員に任命拒否された6人の研究者による論考がまとめられたものです。
  • メディアによる取材には任命拒否について「特に言うことはない」と述べていた宇野重規先生の執筆された章が読みたくて買ったのですが、結局全部読みました。
    • AとBという2人の人物(片方は明らかに宇野先生を表している)による対話形式で、静かに民主主義のあり方を問うというスタイルでした。
    • 内閣が任命しない理由を明確に示さない中で推測をするのは、「こんなことを言ったからいけないんだ」という「忖度」につながるのでむしろ有害であるという見解はなるほどと思いました。
  • 全章を通じて一番面白かったのは、加藤陽子先生の「現代日本と軍事研究」でしょうか。学術会議が過去に戦争・軍事を目的とする研究に反対する声明を出していたことは、任命拒否が起きた際にも報道されて賛否両論が見られたと記憶していますが、学術会議の内部における検討委員会でも論争があったということは初めて知りました。
    • 関連する論点として、そもそも学術会議は何を代表しているのかというものがあり、「科学者の社会における代表」ではなく、むしろ「社会における全科学者の責任を集約する1つの主体」ではないかという視点は、学問の自由と安全保障に関わる研究のあり方を考えていく上で、今後ますます重要になるように思われました。

ヴァージニア・ユーバンクス(2017=2021)『格差の自動化――デジタル化がどのように貧困者をプロファイルし、取締り、処罰するか』

 

 予測モデルが正確に機能するためには、多くの関連データを伴った明白な、曖昧さのない測定基準が必要である。しかし、そうなると、予測モデルは手に入る材料を利用するしかなくなる。「私たちは完璧な結果変数を持っていないわ」とエリン・ダルトンは言った。「被害を直接表す完璧なプロキシは存在しないと私たちは判断しているの」。

[p.187]

 

  • AIやビッグデータ技術が失業を増やすのか、格差を拡大させるのかといったテーマは多く見られるようになりましたが、本書は貧困者を選別して管理するという思想がどう展開してきたかを、19世紀の救貧院の歴史的流れに位置づけていることで、議論に非常に深みが増しています。
  • 救貧院は劣悪な環境であった一方で、人種の壁を超えた階級的な連帯を作り出したという部分は勉強になりました。他方でデジタル上の救貧院では、専門職を持つ中流階級貧困層に対して共感や連帯を形成しづらいことが主張されています。
  • 4章の内容は虐待被害を事例として、アルゴリズムによる福祉政策の対象者の予測の難しさを鮮明に明らかにしていると思いました。虐待による死亡事例は統計的に意味のあるモデルを構築するには数が少なく、ケースワーカが記録した事例の測定にかなりの曖昧さが含まれるということでした。
  • 本書ではそこまで関連させて論じられていなかったと思いますが、一見して普遍的かつ中立的に見える制度が、むしろ非効率的であったり、特定の人々を差別的に扱ったりするという意味では、官僚制の文脈でも重要と言えるでしょうか。自動化された技術によって、福祉プログラムを一方的に停止された人々の徒労感と無力感が描き出されている箇所は、官僚制の非人間的な側面の事例としても理解できそうです。

2022年4月

 

  • 今月は約151km走りました。日によってはもう少し走りたかったのですが、授業が始まると難しい面もありますね。無理はしすぎず継続していきたいところです。
  • 花粉症の症状は下旬になってようやく収まってきたのですが、ひどい日には100回くらいくしゃみをしていたせいか、胸のあたりが痛むようになりました。
  • 体重は日によっては57kg台を示すようになりました。

 

  • 最近は天候が不安定で、昨晩は雪が降っていました。仙台市内では観測史上5番目に遅い記録だそうです。
  • 4月の雪で思い出すのが、自分が小学1年生の時のことです。4月下旬にもかかわらず大雪が降り、しかもその日が八木山動物園への遠足の日でした。今だったら中止になるのかもしれませんが、ずぶ濡れで凍えながら動物園を回った記憶があります(ちなみに同じ日に2年生は、今はなき松島水族館の見学で羨ましかった)。

献血

  • ふと思いついて、久々に献血へ行ってみました。アエルの20階の献血センターです。
  • 履歴を見たら約2年半ぶりでした。前回は非常勤先の大学に来ていた献血カーを利用したと思います。
  • アエル献血センターには初めて行ったと思うのですが、広くてきれいでした。20階ということで、窓から見える景色もよい感じです。
  • 献血センターの中のWi-Fiにつなぐと、無料で電子書籍が読めるというサービスをやっているのを初めてみたのですが、なかなか画期的だと思いました。今日の待ち時間は家から持参した本を読んで時間を潰したので利用しませんでしたが。
  • ウェブでの予約や登録するとポイントを貯めることができるシステムも初めて知りました。予約をして来ている人がかなり多かった印象です。

Fukushige et al.(2012)「修正Kakwani係数による健康の不平等の測定」

Fukushige, Mototsugu, Noriko Ishikawa, and Satoko Maekawa. 2012. "A Modified Kakwani Measure for Health Inequality." Health Economics Review 2(1): 1-7. 

 

  • Kakwaniによる税の累進度の測定指標に簡単な修正をし、医療サービスへのアクセスの不平等を評価するのに適したものにできることを提案する
  • Kakwani係数が集中度係数からジニ係数の差をとるものであるのに対して、集中度係数(C)をジニ係数で割った比の形に修正する
    • すなわち、MDK = C/G
    • 集中度係数とジニ係数の測定には、所得の代わりに消費支出を用いる方法も考えられる(MDK_C)

 

  • MDKの値によって医療サービスへのアクセスの不平等を次の5つに分類できる
    • (1)MDK < 0 → 逆進的(degressive)
    • (2)MDK = 0 → 定額負担(constant payment)
    • (3)0 < MDK < 1 → アクセスしやすい状態(accessible)
    • (4)MDK = 1 → 比例負担(proportional payment)
    • (5)MDK > 1 → アクセスしづらい状態(less accessbile)

 

  • それぞれの医療支出の加重和の形に分解もできる
    • MDK = w_a*K_a + w_b*K_b + w_c*K_c

 

  • MDKの値は、所得の平均値で評価した際の弾力性という解釈も有する

 

  • 2000年から2010年の「家計調査」における医療費支出をデータとした分析
    • データの制約上、2人以上の人員を含む世帯に限定
    • 2000年時点では、MDKとMDK_Cの値はどちらも0に近く、定額負担に近い状態だったものの、10年の間にどちらも増加
    • MDK_Cの増加はより急激であり、2010年時点ではほぼ1に近く、比例負担の状態になっている
    • 元のKakwani係数とくらべて、定額負担の状態を捉えられるのが比の形式をとっているMDKの利点の1つである

仕事を引き受けること

  • 年々いろいろと仕事の依頼をいただくことが増えてきていて、それ自体はありがたいことが多いと感じています。しかし、なるべく断らないようにしているので、キャパシティを超えているんじゃないかと感じることもしばしばあります。
  • K先生は東大に来る前の頃に、「午前中は自分の研究時間と決めていて、どんな仕事が来ても一切断っていた」と聞いたことがあります。自分には同じようなことはできそうもありませんが、自分の時間をディフェンスすることや、自分の中でルールを持つことの重要性を印象付けられました。
  • またG先生がおっしゃっていたことですが、東大に赴任した頃にある年配の先生から、「Gくん、この大学に来たからには、できる限り馬鹿なふりをしなさい。そうしないと無限に仕事が降りかかってくるよ」と言われたことがあったそうです。G先生はその後に学内でも要職を務められているので、その通りには振る舞わなかったのかもしれませんが。
  • 論文の査読に関して、印象に残っている言葉があります。前に某学会の編集委員長を務められた先生が、「論文の査読というシステムは互酬性によって成り立っています。1本の投稿論文につき、2人の査読者がボランティアで引き受けています。だから1本論文を投稿したら、2回査読を引き受けてください」というようなことをおっしゃっていて、それはもっともだなと思いました。