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The Metamorphosis

The Metamorphosis

The Metamorphosis

Kindle版で一番安いのを選んだら、表紙がキモすぎた(上記のサムネイルとは違う)。
作品中にはどのような生物かの詳しい描写はなされていないので、出版社が勝手に想像して表紙をつけるのはよくないと思う。Wikipediaによると、もともとのドイツ語版では、部屋に通じるドアから男が顔を覆いながら逃げ去る姿が表紙になっていたようだ。


学部1年の時に新潮文庫から出ている翻訳を読んで、その後にたまたま友人1人と先輩2人といた時にこの本が話題に上がったことがあった。

その際に友人が、「この作品は本当は家族愛を描いたものであると思う」というような感想を述べていた。
自分を含むの他の人たちは、その意見に全く同意できなかったのだけれども、今回読んでみて、彼の言っていたことに少しだけ賛同できると思った。


この作品では、旅行セールスの仕事をしている主人公グレゴールが、ある朝起きたら巨大な虫になっていたという場面から始まり、またなぜそれが起きたのかというのは一切説明されず、次第に家族がそのような状況に耐えられなくなってゆくという不条理な出来事が基本的に描かれている。


しかし、虫に変わってしまったグレゴールが天井や床を這いまわる習慣を身につけたのを見て、妹のグレーテは母親と協力して、邪魔な家具を取り払ってやろうと考えるなどの描写がある。つまり虫になったグレゴールに対する恐怖とともに、家族としての思いやりも残っており、微妙なバランスの上に立っていることが伺える。もっとも、最後はグレーテが耐えられなくなり、あの虫はグレゴールだと考えてはならず、処分しなければいけないと父に嘆願するのではあるけれども。


また、グレゴール自身も、父親にりんごを投げつけられたり、妹から上記のようなことを言われたりしつつも、家族の愛情を思い出しながら息絶えるという意味では、単に家族の崩壊過程を描いた物語とは言いがたい面がある。ただし、グレゴールは同時に、このような状況にあっては自分は死ななければならないという自覚を(父よりも強く)持ったと書かれており、これを家族愛と本当に呼んでよいのかは微妙な部分も含まれると思う。