野村正實『雇用不安』
- 作者: 野村正實
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1998/07/21
- メディア: 新書
- 購入: 1人 クリック: 5回
- この商品を含むブログ (13件) を見る
1998年の本で、ちょうど失業率が初めて4%を超えた年にあたる。戦後最悪の失業率と喧伝された中で、「それでもなぜ日本の失業率は欧米と比べると極めて低いのか」という問いを本書は立てる。
その問いに答えるために出される概念が、「全部雇用」。限界生産性よりも低い賃金で働く縁辺的な労働力(特にパートの女性)が多くいるという点で完全雇用とは異なるが、失業率は低く抑えるという雇用のあり方に焦点が当てられている。分析概念としてはとても明晰。
著者の考えとしては規制緩和を進めてゆくよりは、「全部雇用」を維持+それに伴う正規・非正規の待遇の差やジェンダーの不平等はを漸進的に改善してゆくのが望ましいとのこと。
2010年の状況に照らしてみると、失業率は5%強で欧米に比べると未だ低いが、縁辺的な労働は拡大した。これは著者が想定した「全部雇用」の維持とはまた違ったストーリーか。