Crazy Rich Asians

 

 AMC Loews Boston Common 19にて。公式サイトはこちら

 ハリウッド映画にしては珍しく、主要キャストが軒並みアジア系俳優という作品です。ちなみに邦題は『クレイジー・リッチ!』となっているようで、邦題をつける時は意訳であったり副題であったりで原題よりも長くなる印象があるのですが、本作はむしろ逆ですね(でも、「!」を余計に入れるところは、いかにもという感じがします)。

 貧しいシングルマザー家庭で生まれた中国系アメリカ人で、ニューヨーク大学の教授として働く女性が主人公になっています。交際しているボーイフレンドが故郷のシンガポールで親友の結婚式に出席することになり、彼女にもぜひ一緒に来てほしいという誘いに応じ、生まれて初めてアジアを訪れることになるものの、実はそのボーイフレンドが「クレイジーな」レベルの富豪で…というようなプロットです。

 ボーイフレンドの家族に結婚を反対される描写があるのですが、その際に主人公の出自が洗練されていないという他に、(中国人の両親の元に生まれているにもかかわらず)「アメリカ人だから」という育った場所による境界がロジックとして使われていたのが面白かったです。

 全体として文化的、あるいはジェンダーによる葛藤の他にも、笑いあり、涙ありで、またハリウッド映画ならではのド派手な演出もあり、質の高いロマンティック・コメディでした。

 

Max Weber (1917=2013) "Science as a Vocation"

 

 

The Vocation Lectures: “Science as a Vocation

The Vocation Lectures: “Science as a Vocation" & "Politics as a Vocation": 'Science as a Vocation' (Hackett Classics)

 

 

 日本語訳では何度か読んでいますが、英訳で読むのは初めてでした。やはり古典と呼ばれる作品は、その時々の自分の年齢や関心などに応じて新たな発見が往々にしてあるものです。以前に読んだ際は、近代社会における科学や学問の意味、大学における研究者を目指す若者が持つべき心構えなどについてがより響いたと記憶していますが、今回は教師の資質や役割についての部分を興味深く読みました。

 教壇における教師が語る内容について事実と価値の峻別をWeberは説いており、彼の「価値自由」の概念を理解する上でも重要になる主張ですが、当時のドイツ社会における事実よりも経験、教師よりも指導者を求める若者の風潮という文脈を押さえて捉えられるべきだということを、今回読んで確認しました。

 

To make an initial point: the first task of a competent teacher is to teach his students to acknowledge inconvenient facts. By these I mean facts that are inconvenient for their own personal political views. Such extremely inconvenient facts exist for every political position, including my own. I believe that when the university teacher makes his listeners accustom themselves to such facts, his achievement is more than merely intellectual.

Bear in mind that the value of a human being does not depend on whether he has leadership qualities. And in any case, the qualities that make someone an outstanding scholar and academic teacher are not those that create leaders in practical life or, more specifically, in politics. 

 

スティーブン・R・コヴィー(1989=2013)『完訳 7つの習慣――人格主義の回復』

 

完訳 7つの習慣 人格主義の回復

完訳 7つの習慣 人格主義の回復

  • 作者: スティーブン・R・コヴィー,フランクリン・コヴィー・ジャパン
  • 出版社/メーカー: キングベアー出版
  • 発売日: 2013/08/30
  • メディア: ハードカバー
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 すごく有名な本だということだけは知っていましたが、初版は1989年なのですね。もっと前に出版された本かと思っていました。当時の(おそらく現在も)自己啓発本によく見られる、小手先のテクニックで人生をよくしようとする「個性主義」(the personality ethic)に対して、普遍的な原則(principles)に基づいた「人格主義」(the character ethic)への転換が説かれています。

 個人的にもっとも印象に残った言葉があったのが、「第5の習慣:まず理解に徹し、そして理解される」の章でした(ちなみに偶然にも、第5の習慣こそもっとも実践が難しいと、著者があとがきにて述べていました)。

 

私たちはたいていまず自分を理解してもらおうとする。ほとんどの人は、相手の話を聴くときも、理解しようとして聴いているわけではない。次に自分が何を話そうか考えながら聞いている。話しているか、話す準備をしているかのどちらかなのである。

 

 自分の経験で言うとゼミで発表を聴いている時などに、ついつい次に何をコメントするかを考えていて、相手が何を伝えたいかに注意しておらず、内容が結局あまり頭に入っていないということがあるので、省みるところがありました。あとは、英語で会話をする時にも顕著ですね。会話が途切れるのが怖くて、次に何を話すかに意識が集中していることがよくあります。

 

鶏ハム

 

 こちらのレシピを参考に。

 鶏の胸肉はぱさついているのが気になって、もも肉に比べると好きではなかったのですが、これはしっとりしていておいしいです。特に運動後だと、「たんぱく質を食べている」という感じになれるのもよいですね。塩加減は試行錯誤の余地があります。

九井諒子『ダンジョン飯』(1)~(6)

 

ダンジョン飯 6巻 (ハルタコミックス)

ダンジョン飯 6巻 (ハルタコミックス)

 

 

 前々からタイトルは知っていて、気になっていた漫画でした。最新刊まで一気に購入して読みました。

 フィクション(ファンタジー)+グルメという異色の組み合わせの漫画ですが、自分が読んだことがあるグルメ漫画を振り返ると、ぱっと思いつくのは『孤独のグルメ』、『一日外出録ハンチョウ』あたりで、一癖あるものばかり読んでいるのかもしれません。あと最初の方だけ読んだことがあるものとして、『きのう何食べた?』がありますが、料理に関しては正統派であるものの、家族形態という意味ではちょっと変わっていますね。

 ファンタジー漫画の中で食について扱うというのは、どれだけ前例があるのかは詳しくは知りませんが、ゲームだと『不思議のダンジョン』シリーズがあり、空腹に対処するためにダンジョン内で食べ物を調達し、かつ持ち物の上限やお金とバランスを取ることを考えなければいけないという点では共通していると思いました。テーマ設定の新奇性にとどまらず、主人公をモンスターの生態や味に対して異様に執着を持つ自分に設定にすることで、レシピに深い考察が行われるようにしているのが作品をより面白くしているポイントでしょう。

 

先崎学(2018)『うつ病九段――プロ棋士が将棋を失くした一年間』

 

うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間

うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間

 

 

 『3月のライオン』の監修で知られるプロ棋士、先崎九段の近著です。昨年の秋に起きた将棋界の騒動に巻き込まれたストレスの影響で、しばらくうつ病に罹っていた自らの経験を記したエッセイになっています。

 本書で何度も強調されており、印象に残ったのは「うつ病は脳の病気である」というものでした。うつ病の原因には遺伝的・環境的なものが複雑に絡み合っており、正確には分かっていないようです。ただ、著者の症状として簡単な活字のニュースが頭に入らなかったり、本来ならば一瞬で解けるはずの詰将棋も解けなくなったという部分を読むと、うつ病は単なる心の病気では決してないのであるということが説得的に伝わってきます。

 著書や週刊誌などでの連載経験も多くある方だけであり、病み上がりとは言え文章はさすがに読ませるものがあります。入院からの回復期において同じような日々の記録が繰り返されていてやや冗長な部分もありますが(朝起きられない、ひたすら散歩に行くなど)、後書きでは「エピソードがもともと少ない上に、頭がしておらず、気がづいたら回復していた」状態であったと断られています。

 うつ病の症状・回復に関するエッセイは類書もそれなりにあるのかもしれませんが、やはりそれなりの社会的地位のある人が自らの経験を赤裸々に語っているというのは貴重だと思います。